「開幕戦で沈んだ原因は、分かっています」。逃し続けてきた予選ポイントもカギに【スーパーフォーミュラ王座への勝算:牧野任祐陣営】
2024年も鈴鹿サーキットでの2連戦でシリーズチャンピオンが決まる全日本スーパーフォーミュラ選手権。第7戦富士を終えて、坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が86.5ポイントでランキング首位に浮上し、それを14.5ポイント差で牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、16.5ポイント差で野尻智紀(TEAM MUGEN)が追いかける状況となっている。 ポイント差だけをみると坪井が一歩リードのように見えるが、果たして牧野や野尻の逆転があるのか? 各号車の担当エンジニアに、“鈴鹿決戦”に向けた見通しを取材した。 ■見極めが難しい予選のセットアップ変更 「坪井選手が前回(の富士)も調子が良かったので、おそらく今回も行かれるだろうなとは思っていましたが……2連勝されてしまうと『ちょっと厳しいな』という感じです」 そう語るのは牧野の5号車を担当する杉崎公俊エンジニア。首位の野尻から5ポイント差のランキング2番手で迎えた富士2連戦は、第6戦では予選Q2でミスがあり9番手に沈むも、決勝で挽回し4位入賞。続く日曜日の第7戦では僅差で予選4番手となったが、決勝では一時トップ争いに絡む走りをみせて3位表彰台を手にした。これにより、首位に浮上した坪井との差は14.5ポイントとなった。 この結果を受けて杉崎エンジニアは「14.5ポイント差はだいぶデカいですね。(鈴鹿では)最低でも2連勝はしないといけないなという気持ちでいます」と苦い表情をみせる。 改めて富士大会を振り返り「今回は(上位3台に与えられる)予選のポイントを取りこぼしたのが痛いなと思います。Q1であれだけ速くても、Q2でしっかり上にこないと意味がないので……」と杉崎エンジニア。今シーズンは公式テストや土曜日のフリー走行でライバルを上回る速さを見せている牧野だが、いざ予選、とりわけQ2になるとそのポジションを維持できず、後方グリッドからのスタートとなっている。 実際に杉崎エンジニアが指摘する予選ポイントが獲得できたのも第2戦オートポリスのみという状態。フリー走行までの調子をいかに維持するかが、5号車陣営にとっては目下の課題となっているようだ。 「そこは以前からの課題で『どうしようか……』というふうになっています。(セット変更も)変えたら変えたで『変えなきゃ良かった』となるし、その逆もあります。その見極めが難しいところですね」と杉崎エンジニア。 「(ポールポジションを獲得した)昨年の富士はコンディションの違いにうまくアジャストできたのですけど、その“コンディションの違い”があるのかないのかというのと、そこに対してアジャストするべきか否かというところの精度を上げていかないといけないのが反省点です」 最終大会の舞台となる鈴鹿サーキットは開幕前のテストから好調だったが、いざ第1戦のレースウイークになるとトップには届かず、決勝でも後半スティントで苦戦してしまい、結果的に10位でレースを終えていた。 「開幕戦は沈みましたけど、その原因は分かっています」と牧野本人は語る。 「シーズン中にセットアップも含めていろいろと試してきて、僕自身も自分の殻を破るきっかけになったのがオートポリス(の初優勝)だったと思います。そういった意味で、最終大会の鈴鹿は2レースありますけど、開幕とはまったく違う内容になると思いますが、いずれにしても僕は追いかける側なので、全部やり切った上で結果がどうなるかだけだと思っています」と、最終大会に向けては3月とは違った手応えをつかんでんでいる様子だった。 杉崎エンジニアも最終大会に向けては「昨年から今年にかけて、各サーキットでいろいろなコンセプトを一通りやってきました。(6号車の太田)格之進の方も予選・決勝ともに速いというデータもあるので、そう言った意味では手応えはあると思っています」とポジティブに捉えている様子。 例年に比べて2週間遅い最終大会ということで、コンディションの変化も予想されるが「そういう時に速くなってくるクルマもいると思いますけど、それ以上に速く走れば良いだけのことなので。ダブルでポール・トゥ・ウインを狙いに行きます!」と純粋にトップを獲ることだけを見据えていた。 [オートスポーツweb 2024年11月06日]