コロナ後遺症の倦怠感は“亜鉛不足”が原因か?「慢性疲労」の患者を診察・治療してきた医師が語る
患者さんの4分の3が亜鉛不足
亜鉛は体のさまざまな細胞機能と関連しています。大脳辺縁系にある海馬と扁桃体には亜鉛が豊富に存在して、記憶や感情に重要な役割を果たしています。2~3割の日本人が亜鉛不足といわれていますが、当院に受診された、コロナ後遺症の4分の3の患者さんが基準値下限の80mg/dlを下回っていました。中等度以上の亜鉛欠乏状態の患者さんは、市販の亜鉛サプリメントや亜鉛を含んだ胃薬では補充効果が不十分で亜鉛製剤(酢酸亜鉛)を服用するのが最善です。 マグネシウムが欠乏している慢性疲労の患者さんの数は亜鉛欠乏に比べるとかなり少ないものの、マグネシウムは神経伝達物質の生成にかかわっており、その不足は不安やうつとも関連するとされています。 マグネシウムは亜鉛より食事からの補充が容易です。ほうれん草などの葉物野菜や、アボカド、ナッツ、チアシード、豆類、全粒穀物、豆腐、サケやサバなどの魚に多く含まれています。 また、慢性疲労症候群の患者さんでは、ビタミンD不足の人が多いことが以前より指摘されています(文献2)。ビタミンDが多く含まれる食品は、イワシ、サケ、ニシンなどの魚類です。 慢性疲労に関連するビタミンDや必須ミネラルである亜鉛やマグネシウムなどは、患者さんに不足しがちです。必要に応じて補充するようにしてください。 参考文献 1. 厚生労働省:厚生労働省:厚生労働科学特別研究事業.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基盤研究.令和3年度 総括研究年度終了報告書. 研究代表者 福永興壱. 令和4(2022)年4月 2. Berkovitz S, et al. Int J Vitam Nutr Res (2009). https://doi.org/10.1024/0300-9831.79.4.250 堀田修(ほった・おさむ) 1957年、愛知県生まれ。防衛医科大学校卒業、医学博士。「木を見て森も見る医療の実践」を理念に掲げ、2011年に仙台市で医療法人モクシン堀田修クリニックを開業。特定非営利活動法人日本病巣疾患研究会理事長、IgA腎症・根治治療ネットワーク代表、日本腎臓学会功労会員。2001年、IgA腎症に対し早期の段階で「扁摘パルス」を行えば、根治治療が見込めることを米国医学雑誌に報告。現在は、同治療の普及活動と臨床データの集積を続けるほか、扁桃、上咽頭、歯などの病巣炎症が引き起こすさまざまな疾患の臨床と研究を行う。近年はEAT(上咽頭擦過療法)を使った「新型コロナ後遺症」への取り組みも注目を集めている。『つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい』(あさ出版)。 協力:あさ出版 あさ出版 Book Bang編集部 新潮社
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