「退職金の中から寄付してくれと…」進むジリ貧国立大学事情「今ここにある危機」を大学関係者が警告
このままでは、高度な頭脳労働は欧米人や中国人が行い、その下請けで日本の工場労働者が延々と働かされる世界に…
加えて、国が大学の人事に介入する危険性をA教授は指摘する。 「’20年に東大と筑波大の学長選考問題がありました。 東大学長選考の場合は、官邸の意向を忖度したのか、官邸から圧力が直接あったのか、選考リスト11名の中から学内の予備意向投票に反して本選を3人までに絞り、予備意向投票1位だった対抗馬までも露骨に排除したんです。 それらは選考過程が不透明だという批判が教職員から相次ぎ、選考会議議長は責任をとって辞めましたが、説明を果たしていません。どうも状況から見ると、学術会議のときと同じということです」(A教授) 同様の問題が、昨年末に行われた千葉大学長選でも起こっている。教職員投票1位が選ばれず、不透明であるとして教授や学生が反発している問題において、説明を求める学生・卒業生有志の1万4280筆の署名が2月末に提出されたのは記憶に新しい。 気をつけなければいけないのは、これが大学だけ、学問だけの問題ではなく、結局のところ私たちみんなの生活に影響を及ぼすということだ。 「学術会議問題や国立大学総長選を見れば、一般市民の皆さんも、自分たちの税金が不正に使われていると感じると思います。 受験生たちには1点でも多い人が通ることを絶対だとしておきながら、総長選は点数を無視して決めていいの? と。 このまま大学の貧困が続くと、高度な頭脳労働はみんな欧米人や中国人が行い、その下請けで日本の工場労働者が延々と働かされる世界になっていく状況もあり得ます。そういう未来は楽しいですか。現に携帯電話も韓国と台湾がなかったら作れない状況になっていますよね」(A教授) 「株価高騰ばかりが報じられますが、日本の相対的な地位の低下は誰もが知るところですよね。そんな中でどうやって再浮上させるかとなると、結局、学問頼みなんです。にもかかわらず、大学に無駄なことをするな、もっと効率よく研究しろと言うんです」(B准教授) 『今ここにある危機とぼくの好感度について』(’21年/NHK総合)は、名門大学の不祥事が描かれたドラマだが、これを学問の世界ではなく、政治の話と重ね合わせて見た人は多かった。メディアをコントロールし、市民の個人情報も掌握し、大学もコントロールしようという「今ここにある危機」は、着実に進んでいるのだ。 取材・文:田幸和歌子
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