「退職金の中から寄付してくれと…」進むジリ貧国立大学事情「今ここにある危機」を大学関係者が警告
「教育と称して大学院生を安く使えるわけですから…」
「産官学連携」とは、学問を民間が食い潰すことなのかという気もしてくるが……。 「バブルが崩壊した辺りから、民間企業も自社の研究所をどんどん閉鎖していきましたよね。それで、その肩代わりが大学というわけです。自前で研究所を持つよりも大学にお金を数百万円渡して研究させる。 大学院生なんてほぼタダ働きさせられるようなものですからね。それでも今までよりはいくらか豊かな生活ができるので、大学側はそれを受け入れてしまう。 教育と称して大学院生を安く使えるわけですから、民間キャリアにとっては効率が良いはずです」(B准教授) ちなみに、アメリカの有名大学では、卒業生が過去200~300年と巨額の寄付を積み重ねてきた大きなファンドがあるため、そのファンドで大学は潤っており、日本のように「足りない金を教員と院生で奪い合う」といったような状況はないとA教授は言う。 また、ヨーロッパでは、大学院生も給料をもらい、1人の研究者として扱われているとB准教授は補足する。 「ヨーロッパもアメリカも、大学院生に組合がありますからね。それで、ストライキをやったり、給料を上げさせたりしていましたけど、日本の場合はそうじゃない。扱いが根本的に違いますから」(B准教授) ◆中国の大学が世界の研究ランキングで伸びているワケ 昨年末には多くの反対を押し切って、国立大学法人法改正が可決、成立した。この影響で危惧されることを聞くと、A教授は「日本の国立大学の中国化」を挙げる。 「日本の国立大学の法人化は、もともとイギリスの大学をモデルに始まったんですが、国立大法人法改正がモデルにしているのは、中国の大学としか思えないんですね。 中国では政府や学校、企業など多くの職場に中国共産党の幹部候補みたいな『書記』が派遣されていて、その書記が各大学では学長、理事長、総長の頭を押さえつけて『この研究をやれ、この研究はやるな、この教員は追放しろ』みたいな命令を強権的に行うシステムになっています。 中国の大学が世界の研究ランキングですごく伸びているのは、そうした採点基準を作り、書記がそれに合うようにプランしているからと聞きます。 でも、日本はイギリスをモデルにスタートしたのに、中国に学べと言って、日本の実態を考えず安直に中国と同じような制度設計を政治家が進めてしまっているんです」(A教授) 「一番危惧するのは、運営方針会議が中期経営計画の決定権を持つことで、例えば新しい学部・学科を作れ、流行りのAIの研究をやれなどと頭ごなしに命令してくる可能性が高いこと。似たことが下関市立大学で起こっています。 公立大学のトップは自治体の長で、議会で決まったら、それが大学の方針になるんですが、思いつきで新しい学部を作れと言って、教職員が混乱している。そうしたケースがあちこちで起こる可能性があるわけです」(C准教授) 大阪府と大阪市が設置する「大阪公立大学」で「公用語英語」「秋入学導入」などが検討されているとして多くの批判を浴びているのも、まさにその一例だろう。