住宅密集地の建坪7.5坪でも「狭くない」家。都市の一戸建てを諦めたくなくなる!アイデアとプランに驚く建築家の自邸
共に建築家の青柳創さんと青柳綾夏(aoyagi design)さんご夫妻。 以前は賃貸マンションで暮らしていましたが、娘さんが幼稚園に通い始めるときを見据え、定住する場所と幼稚園を探すことに。 【写真で見る】狭小の敷地に負けない建築家の発想力がすごい!上質で伸びやかな空間をチェック ここ杉並区には元々縁もゆかりもなかったものの、閑静な住宅街の環境が好みで予算にも見合った土地と出合うことができ、2020年春、自ら設計した一軒家を完成させました。
難易度の高い狭小地かつ変形地との出合いが、ポジティブな発想の源に
出合った土地の広さは15坪。建坪はわずか7.5坪。しかも前面道路に対し地盤面は2m高い位置で擁壁に囲まれている。活用の難易度が高い狭小地、かつ変形地です。 ところがそれを見た青柳さんは「平地より地下を掘りやすく、地階をつくりやすい」と、すぐに閃いたそう。 建蔽率・容積率の制限も厳しいなか、この地盤面の高さを生かして地階を設ければ、平地に2階建ての建物を建てた場合の倍は有効活用できると考え、「縦長の建物になるだろう」と想像。 そこから建物と空間をどのようなものにしようか検討していきました。
“土地の記憶”を残し、道行く人々にも空間の広がりを感じてもらいたい
向かいには小学校があり、校庭の向こうには、川が流れています。 「ここは元々、川原に向かってなだらかに傾斜した土地だったのでは?」と推測した青柳さんは、その“土地の記憶”を残すことに決めました。 前面道路が狭あい道路のため拡幅する工事が必要だったのと同時に、擁壁の高さを下げ、道路への圧迫感を軽減。 道路に向かって下がる傾斜した地形をつくり、砕石を敷いた前庭を設え、まるで元々そこにあったかのように、木を植えました。 個人邸の前庭が、道行く人々の風景として、開かれている。私有と共有の境界が曖昧な、空間の広がりが感じられます。
狭小住宅では諦めて狭くしがちな部分を広くすることで生まれる豊かさ
狭小地にあえてゆったりとした前庭を設け、道行く人々と共有する――この感覚を、家の内部にも踏襲したい。 そこで、一般的に狭小住宅では主として使う場所をなるべく広く確保しようとするところ、発想を逆転させ、リビングや寝室をあえて狭くする。そして玄関・廊下など、狭小住宅では広く取ることを諦めて狭くしがちな部分をむしろ広くする。それによって豊かさが生まれるのではないだろうかと、青柳さんは考えました。 「例えば玄関を広げると、それは何をもたらすか。ただの玄関じゃ、なくなるんです。ただ靴を脱いで、履いて、というためだけの空間じゃない。あえて拡張した玄関は、トイレともシアタールームともつながっている。 それぞれの空間の延長部分、兼用スペースとして機能することにより、広く豊かに感じられるのです」