いつでもどこでも誰とでも 仲間が広がる「まわしよみ新聞」/福岡県福津市
みんなで黙り込んで新聞を精読するわけではない。お茶やお菓子を楽しみながら、紙面以外の話題も含めて雑談とともに進む。30分ほどたった頃、各自が気になった記事を三つ、四つ、切り取り、注目した理由や感想をざっくばらんに話す。 公にするのははばかられるような本音、偏見や臆測を交えた内容でも、参加者を傷つけなければOKとする自由な雰囲気がある。
銀行が預金金利を引き上げる記事には、「そもそも金利って何なの?」「どうしてそんなに上げられるの?」と素朴な声が上がる。参加者の誰かが疑問にかみ砕いて答え、さらに「かつて8%の時代があった。今では信じられないねぇ」とバブル期のことに話題がおよぶ。 犬と猫が並ぶ写真が紙面に載っていれば、「こんな感じで犬と猫を一緒に飼いたいけど、今のマンションでは無理なんだよね」「中古の一戸建てにすれば? ウチは月5万円で借りてるよ」「安いっ!」「そんな金額で住めるんだ」と会話が続いていく。 「そういえば……」と、記事中のワードをきっかけに話題が横道にそれ、思い思いの話に花が咲いていく――。これも妙味の一つだ。 楽しく話すのがモットー。ここで結論を出す必要はないし、意見を戦わせる場でもない。司会役がやり取りの様子を見ながら、次のテーマへと導いていく。
そんなワイワイ、ガヤガヤの空間で、特に人気が高く、毎回のように場が盛り上がるのが、弊紙・読売新聞の「人生案内」のコーナーだという。 切り抜いた人が、寄せられた悩みを読む。参加者は相談に耳を傾け、それぞれが有識者になったつもりで解決策を考える。そんな流れが定着しているそうだ。ひと通り意見が出ると、紙面に掲載された識者の回答を”発表”し、また自由に意見を交わす 。 この日の相談は「母親の愚痴が聞くに堪えない」という内容だった。 「家を出て一人暮らしをすればいいのに」「いや、収入の問題で家を出られないのでは?」「ご飯の間だけでもやめてくれない? と言ってみたら」「愚痴を言うならおもしろく話して、とお願いすれば」「お母さんも仲間を探しているんだ。同調してくれるだけでいいんだよ」。間髪を入れず次々と意見が飛び交う。