いつでもどこでも誰とでも 仲間が広がる「まわしよみ新聞」/福岡県福津市
おしゃべりが終わると、切り抜いた記事を画用紙に貼り付ける時間に。各自がサインペンで自由にイラストやコメントを添え、にぎやかな1枚の壁新聞ができあがった。 「新聞って、一方通行じゃないですか」と言うのは、久しぶりに参加した建築業の永嶋秀志さん(35)。「集まって会話すると自分と周りの認識の違いを実感できます。記事のとらえ方は何通りもあるんだな、と気づけるのが楽しい」と話す。
会話を通じて得る”気づき”
同じ福津市では、複数の学校でまわしよみ新聞を授業に取り入れている。市立福間中では来年1月29日、地域の大人たち80人と生徒が一緒に取り組む授業を計画している。新聞を読み慣れていない子どももいるため、12月には生徒だけで紙面を切り抜いて、意見を交換したのち壁新聞を作る”予行演習”を予定しているという。 学校では「まずは普段話すことがほとんどない大人たちと会話し、意見交換できる力を養いたい。大人の視点による記事の感想を聞くことで、子どもたちも多くの”気づき”を得られるのでは」と期待を寄せる。
来年には400号を迎える王丸屋のまわしよみ新聞。夏休みなどには中高生も参加したり、「雰囲気を味わいたい」という海外からの宿泊客を迎えたり、細く長く活動してきた。「マンネリ化しないよう、遊び心を忘れずに続けたい」と福井さんは話す。
開始から3時間ほどたった帰り際、人生案内の話題でまた盛り上がった。「読者から届く悩みは、かなりの長文なんだろうな。新聞にあれだけ短くまとめるのは大変だろう」。担当者をねぎらう感想から、「毎日どれくらいの相談が寄せられるのかな? 裏話をぜひ聞いてみたい」と話が広がっていく。 「いつも楽しみにしているコーナー。いつか菓子折りを持って、新聞社を訪ねてお礼を言いたいなぁ」。なんだかこちらまでうれしくなった。
読売新聞