ライブで顔を上げるのも怖かった──喉の「爆弾」と闘い続ける、「残響散歌」Aimerの素顔
ライブで「残響散歌」を聴くと、短いフレーズの中でも目まぐるしく歌のニュアンスが変わっていくことに驚かされる。Aimerは「自分でも歌うのが難しいです」と笑うが、その歌声は、喉に結節を抱えているとはとても想像できないほど繊細で力強い。喉にリスクを抱えながらも、彼女はライブにこだわり、日々のルーティンとして、発声練習を2時間はするという。 「喉を守ることを優先するとしたら、もうちょっとライブの本数を抑える考え方もあると思うんです。喉のキャパシティーがオーバーして、声が出なくなったことは、デビューしてからも、実は何回も起きていて。でも、この喉を乗りこなして、ステージ上でやり遂げて、来てくださる方に音楽を届けるっていうことが、いまの自分が選んでるスタンスだし、まったくプレッシャーを感じないと言ったら嘘になるんですけど、それ以上に、ステージに一回出たら、プレッシャーがわからないぐらい集中してるのかな」
Aimerがライブ中に客席を見ると、涙をぬぐうファンの姿が目に入ることもあるという。 「私の音楽の形で、日常からちょっと解き放たれる時間が、みんな好きで来てくださっているのかなって。ちょっとだけ休める時間になったらいいなと思いながら、ライブを作っています」 「日常からちょっと解き放たれる時間」というのは、Aimerの作品や活動の重要のキーワードだろう。それは、彼女の日常にも表れている。 「普段は基本的に単独で行動していますね。日々、本は読みますし、料理をするのも好きです。エッセーや児童文学、純文学も読みます。衝撃を受けたのは三島由紀夫の『金閣寺』。自分の好きなものって、どこかしら闇を帯びてるようなものが多くて。私の音楽にも悲哀が根っこにありますし」 一番助けられた音楽として、スピッツの名を挙げる。 「草野(マサムネ)さんの歌声も、世界観も、音楽を聴いてると、その世界に連れて行ってくれるところが好きです」