「SNSから自分を切り離すことが重要だった」パリ五輪で誹謗中傷や「X」ポーズの侮辱的行為に苦しんだ性別騒動ボクサー台湾リンが金メダルを獲得
パリ五輪女子ボクシング57キロ級決勝が10日、ローラン・ギャロスで行われ、性別騒動に巻き込まれたリン・ユーチン(28、台湾)がユリア・シェレメタ(20、ポーランド)にフルマークの5-0判定で勝利し初の金メダルを獲得した。前日の66キロ級では、同じく昨年の女子世界選手権で失格とされていたイマネ・ケリフ(25、アルジェリア)が金メダルを獲得していた。一時吹き荒れたSNS上での誹謗中傷にもめげずに2人の女性ボクサーが五輪の舞台で頂点を極めた。 【衝撃映像】パリ五輪の男子棒高跳びで起きた“とんでも”ハプニングがSNSで世界中に拡散
メダル授与式で五輪用の台湾旗が掲げられ、国歌が流れるとリンは初めて涙を流した。米「USAトウディ」によるとリンは「信じられない気持ちです」と金メダルの心境を明かし、涙の理由をこう語ったという。 「激しい練習、怪我をしたこと、戦ったライバルたちのすべてのイメージが頭の中を駆け巡った。つらい時も喜びもある。私は感動して泣きました」 決勝は圧勝だった。 1m75のリンは、1m65のシェレメタに対してリーチと身長差を生かしたアウトボクシングを徹底してほぼ何もさせなかった。第1ラウンドからステップワークを駆使してジャブを当て、シェレメタが突っ込んでこようとすると、シュートカウンターを炸裂させた。 第2ラウンドもジャブでコントロール。20歳のポーランド人のボクサーは距離が遠すぎて為す術がない。ここまで5人のジャッジは20-18でリンを支持していた。もう後のなくなったシェレメタは、最終ラウンドにガードを固めて強引に距離をつめ、左右のフックを振り回してきたが、リンは、そこへ待っていたとばかりに左右のカウンターのアッパーを打ち込み勢いを止めた。最終ラウンドもリンが取り、5人のジャッジが全員フルマークでリンにつけるパーフェクト勝利だった。 「すべての戦いが簡単ではありません。5―0で勝つのは簡単そうに見えるかもしれませんが、その裏にはたくさんの練習と努力があります」 リンは試合後にそう吐露した。 性別騒動に巻き込まれた。 IOC(国際オリンピック委員会)から、不正のまかり通る不透明なガバナンス不備を理由に五輪から排除されている IBA(国際ボクシング協会)が、昨年の女子世界選手権で、リンが性別適格性検査で一般的に男性が持つ「XY」染色体が検出されたなどの理由で銅メダルを剥奪されたことを明かしたことが性別騒動に火をつけた。29歳のリンは、東京五輪にも出場し、2018年と2022年に女子世界選手権を制覇したが、昨年の女子世界選手権で突然、出場資格を認められなくなった。 SNSなどで誹謗中傷を受け、準々決勝ではリンに敗れたスベトラーナ・スタネバ(ブルガリア)がリング上で指で「X」の文字を作る侮辱的な抗議パフォーマンスを行った。一般的に女性が持つ「XX」染色体を示したと見られ、このボクサーのコーチは、「私は女性とだけ戦いたい。私はXXです」と書かれた手書きのメモを示し、「これは多分、この(パリ五輪の)トーナメントに参加している全ての女性ボクサーからのメッセージです」と訴えていた。
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