もう一度ゼロから創り上げる「駒大高校サッカー部はどうあるべきなのか」。駒澤大高は選手権全国4強の堀越に競り勝って東京ベスト8進出!
[6.2 インターハイ東京都予選2回戦 駒澤大高 2-1 堀越高 堀越学園総合グラウンド] 【写真】「なんと!」「こんなかわい子ちゃんが…」ユニ姿で連番観戦した“美女2人”に脚光 200人に迫る数の選手たちが集った赤いスタンドから、あれだけの声援を送られてしまったのならば、ピッチの選手たちもやらないという選択肢を持てるはずがない。それぞれが、それぞれの場所で、自分にできることを全力でやり切る。これがこのチームを貫いてきた一番大事な核になるマインドだ。 「『我々駒大高校サッカー部はどうあるべきなのか』というのを、この数週間はずっと話をしていて、もちろん今まであったものでも残したいものや大事にしたいものはあるけれども、本当にゼロから積んでいくようなイメージをみんなで持ってやっていこうというのが今の駒大高校の形です」(駒澤大高・亀田雄人監督) チーム一丸で果たした難敵撃破!令和6年度全国高校総体(インターハイ)東京都予選2回戦が2日、堀越学園総合グラウンドで開催され、10年ぶりの全国を狙う駒澤大高と昨年度の選手権で全国4強に食い込んだ堀越高が対峙した一戦は、MF内田龍伊(3年)が決勝ゴールをマークした駒澤大高が2-1で勝利した。8日に行われる準々決勝では関東大会王者の大成高と対戦する。 前半8分。早くもスコアが動く。動かしたのは駒澤大高。前線に入ったFW岩井優太(2年)が左サイドへ振り分けると、外に開いたMF森田敬太(2年)はグラウンダーで丁寧なクロス。ここに3列目から飛び込んだMF寺尾帆高(3年)のシュートが鮮やかにゴールネットを揺らす。「サイドの選手がドリブルできるのは自分たちの武器で、『クロスが入ってくるところに対して、しっかり枚数は入ろう』という話はしていました」と口にしたキャプテンの先制弾。まずは駒澤大高が1点のアドバンテージを手にする。 以降もゲームリズムは「相手に持たれる時間が多かったですけど、練習から『ショートカウンターを狙っていこう』と言っていました」と内田も語った駒澤大高。28分にはDF平岡潤大(2年)の果敢な攻め上がりから、岩井が打ち切ったシュートは堀越のGK佐藤晴翔(3年)がファインセーブ。34分にもDF小熊鉄平(3年)が左から放ったシュートが左ポストを直撃すると、39分にここも平岡のパスから岩井が陥れたゴールはオフサイドで取り消されたものの、追加点の雰囲気を漂わせる。 一方の堀越はDF森奏(3年)とDF森章博(3年)の両センターバックと、MF渡辺隼大(3年)を中心にボールはある程度動く中で、なかなかフィニッシュまでは至らず。前半終了間際の40分にMF仲谷俊(3年)がゴールまで30メートル近い位置から枠へ収めた無回転FKは、駒澤大高のGK丸林大慈(3年)がファインセーブで応酬。前半は1-0のままで40分間が終了した。 次のゴールが生まれたのは後半7分。堀越は相手のビルドアップミスを見逃さず、奪ったボールを右サイドへ展開。仕掛けたFW岩崎晄芽(3年)のクロスに、飛び込んだFW三鴨奏太(2年)の完璧なヘディングがゴールネットへ突き刺さる。1-1。試合は振り出しに引き戻された。 「ビルドアップミスで『よくある失点だな』と思っていましたし(笑)、気持ちが落ちるような失点の仕方ではなかったので、そこまで急ぐ必要もなく、『0-0の状態だと思ってやろう』ということは意識していました」(内田)「失点しても意外とみんな落ち着いていたというか、『もう1点獲り返すぞ』というエネルギーみたいなものをみんなが持っていたので、逆に落ち着いてもう1回ゲームに入り直しました」(寺尾)。追い付かれた駒澤大高は、冷静だった。 失点から2分後の9分。右サイドから岩井が打ち込んだシュートはクロスバーに跳ね返されたが、まだ攻撃は終わらない。粘って左サイドで残した流れから、森田がシュート気味に入れたクロスを「触るか触らないかぐらいで、あまり深く当てずに、でも、ちゃんとコースに流し込む感じで蹴りました」と内田が優しく合わせると、ボールはゴール右スミへ吸い込まれる。 「この子たちは意外とウイニングマインドというか、負けん気が強いところもあって、あまりバタバタしないですし、あまり崩れないので、そこは良いところかなと思っていますね。失点しても気持ちが落ちている感じもなかったですし、諦めていなかったと思います」(亀田監督)。駒澤大高がまたも1点をリードする。 再びビハインドを追いかける格好となった堀越は、終盤に入ると森奏を前線に上げてパワープレーで最後の勝負に。35分には鋭い仕掛けからFW小泉翔汰(3年)が上げたクロスに森奏が頭で合わせるも、丸林が丁寧にキャッチ。どうしても1点が遠い。 「試合前からどんなに泥臭い形でも、何が何でもゴールを奪って、80分後には自分たちが勝って終わるということを意識していましたし、堀越は強い相手だったんですけど、自分たちはチャレンジャーとして臨むことを意識していたので、それを1試合やり通せたと思います」(寺尾)。ファイナルスコアは2-1。駒澤大高が全国経験者をズラリと揃えた堀越に競り勝って、準々決勝へ勝ち上がる結果となった。 「ゲームに入る前の一発目の応援には震え上がるような感じがするので、そこで『今日はやらないといけないな』と思いますね。仲間が必死に応援してくれている中で、不甲斐ないプレーはできないですし、そういう責任感は強く持たないといけないと思います」。決勝点を挙げてチームの勝利に貢献した内田は、スタンドの仲間たちへの感謝を隠さない。 それはキャプテンマークを巻く寺尾も同様だ。「応援リーダーを中心に良い応援を準備してくれたと思いますし、自分たちは応援ではなくて、『一緒に戦う』ということを意識して取り組んでいるところもあって、本当にピッチ内外が一体となって戦えたのは良かったと思います。試合のメンバーに入れなかったヤツらが昨日も『何が何でも勝ってこいよ』という言葉を掛けてくれたりしていたので、自分たちも『何が何でも結果を出そう』という雰囲気になっていました」。 駒澤大高と言えば、圧倒的な数を誇る赤い応援が常にピッチの選手を後押ししてきた印象もあるが、亀田監督の言葉が印象深い。「駒澤の在り方という話をずっとしてきたんですけど、たとえば応援自体もコロナ禍で1回なくなってしまったので、誰も知らないんですよね。それこそ全体ミーティングもしばらくできなかったですし、この数が力にはならなかった時期が結構あった中で、『それをもう1回ゼロから自分たちで創るぞ』という強い気持ちもありました」。 今の3年生が入学してきたころには、まだ声を出して行う応援は実施されていなかった。だからこそ、この状況が当たり前ではないことも、送られる大声援が自分たちの足を何より動かしてくれることも、彼らはより強く実感している。 「自分が1年生の時は外から静かに見ていたので、正直駒澤の特徴はそんなに感じられなかったんですけど、今はどんどん試合を追うごとにピッチ内外で一体となって成長していっていることは改めて感じています。あの声援を受けると、内側からエネルギーが湧き上がってくる感じで、絶対に自分の持っているエネルギーではないところからもエネルギーをもらう感じなので、やっていても興奮しますね」(内田)。 2014年以来となる、夏の全国出場のために必要な勝利はあと2つ。新たな歴史を創るのはオレたちだ。その数でも、その熱量でも、相手を圧倒する赤き力を結集させてきた駒澤大高の進撃は、まだまだ終わらない。 (取材・文 土屋雅史)