D2Cブランドの出稿が増加 2024年に テレビ広告 が飛躍するかもしれない理由
D2Cブランドによるマーケティングミックスを多様化するための飽くなき追求の一環として、テレビ広告が再び脚光を浴びつつある。 2023年12月から2024年1月にかけて、ジョーンズロードビューティー(Jones Road Beauty)、ボビー(Bobbie)、ケアオブ(Care/Of)など多くのD2Cブランドが初のテレビ広告を開始した。これらのキャンペーンがよい結果を収めれば、各社はテレビ広告費を増やすと思われる。一方、マルチタッチアトリビューションのプロバイダーであるロッカーボックス(Rockerbox)のデータによると、自社の全クライアントについて、この1年間でリニアテレビ(従来型のテレビ)への広告費は15%増加した。 ここ数年、D2Cブランド間でテレビ広告への関心が高まっているが、その主な理由は、FacebookやGoogleへの依存を減らし、広告支出を多様化させる必要性が増しているためだ。また、タタリ(Tatari)やエムエヌティーエヌ(MNTN)などの専業代理店によって、ブランドはテレビ広告を簡単に試せるようになった。しかし一部のマーケターは、2024年は経済が回復し、NetflixやAmazonのようなストリーミングサービスが広告付きプランを成長させる必要に迫られていることから、テレビ広告費への支出が特に加速する可能性があると考えている。
小規模なブランドがけん引
粉ミルクブランドの新興企業であるボビーは、テニスのスーパースターである大坂なおみ選手とのエンドースメント契約で、初のテレビ広告キャンペーンを開始した。「Parents Push Harder(親たちは頑張っているの意)」と題されたこの広告は、2024年の全豪オープン期間中にESPN(アメリカのスポーツ専門チャンネル)で放映された。このキャンペーンはストリーミングテレビでも流れ、屋外広告や有料ソーシャルの要素も含まれている。 大坂なおみ選手が出演したボビーの広告「Parents Push Harder」 この広告が放映されてから数週間しか経っていないが、ボビーの最高ブランド責任者を務めるキム・ジェビア・チャッペル氏によると、ESPNで広告が放映される時間帯は、オーストラリアとの時差を考えれば中途半端な時刻だったにもかかわらず、サイトへのトラフィックはすぐに増加したという。 「ブランド認知キャンペーンとして、この広告は共感を集めているようだ」と、チャッペル氏は話す。 この最近のテレビブームについて特に興味深いのは、少なくとも、これまで一般的にテレビ広告を出してきたタイプのブランドに比べると、小規模なブランドがけん引しているということだ。ロッカーボックスのデータによると、同社のクライアントのうち、リニアテレビへの広告支出額が500万ドル(約7億4000万円)未満のクライアントが過去1年間に約74%増加しており、これはロッカーボックスの全クライアントが報告したリニアテレビ広告費の増加率を上回っている。 ロッカーボックスの共同創設者兼CEOのロン・ヤコブソン氏は、テレビ広告へのD2Cブランドの関心は、特に2021年前後、パンデミックのあいだにeコマースの売上が激増したあとの「景気が良かった時期」から増えはじめたという。「そして、この数カ月に事態が厳しくなったときに引き戻しがあったが、また増えはじめている」。 一般的な話として、ほとんどのD2Cブランドがテレビ広告に参入するようになったのにはいくつかの要因があるとヤコブソン氏は話す。FacebookやGoogleでの収益減少に気づきはじめたか、「FacebookやGoogleに過剰に依存することへの懸念」のためである。 FacebookやGoogleでの広告だけで2000万ドル(約29億6000万円)から4000万ドル(約59億2000万円)のビジネスを作り上げられるD2Cブランドは今でも存在するが、iOS 14のアップデートのようなプラットフォームの変化や、GoogleでのサードパーティーCookie廃止などがブランドの広告ビジネスに大打撃を与えたことによって、ますます稀になりつつある。このような変化がブランドのビジネスに影響しなかったとしても、さらなる多様化によってGoogleやFacebookへの依存を減らすべきではないかとブランドは考えるようになっているとヤコブソン氏は語る。