心電図検査には問題だらけ…「異常判定」が「異常」に多くなる健診に隠された当然の仕組み
毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。 『健診結果の読み方』連載第8回 『低血圧で「認知症」に...「低血圧に治療の必要はない」のに「カラダは危険」なワケ』より続く
心電図検査とは何か
心電図検査は心臓の異常を調べる検査で、主に不整脈と虚血性心疾患(狭心症など)のスクリーニングに用いられています。 心臓には洞結節と呼ばれる部位があり、そこから1分間に数十回(運動中などは必要に応じて百数十回)電流が発生し、心臓全体に広がって、統率のとれた拍動を繰り返しています。この電流を測定し、波形を調べることによって心臓の異常を見つけるのが「心電図検査」です。 健診で使われるのは「12誘導心電計」と呼ばれる装置です。両手首と両足首にクリップ型の電極、胸に心臓を囲むように6個の吸着式電極を取り付けます。電極は全部で10個ですが、出てくる波形は12種類。だから12誘導と呼ばれています。
心電図検査でわかるさまざまな病気
拍動のリズムが乱れるのが、不整脈です。洞結節に異常があったり、洞結節以外の場所から二次的に電流が発生したりするのが原因です。不整脈には多くの種類があり、放っておいても大丈夫というものもあれば、突然死の原因になるものもあります。 虚血性心疾患は、心臓の冠動脈(心臓自体に血液を送る動脈)が動脈硬化で狭くなったり、血栓が詰まったりする病気です。狭くなるのが狭心症で、詰まるのが心筋梗塞です。これらの病気でも特徴的な波形が出ます。ただし自覚症状や発作が起こったひとは、大抵すでに病院を受診しています。まして心筋梗塞だったら、すぐに救急車で運ばれます。だから健診がきっかけではじめて見つかるのは、比較的軽い狭心症などです。 健診の心電図検査には、次のような問題点があります。 ひとつは計測時間が短いこと。普通は20秒とか30秒、丁寧にやっている病院でも、せいぜい60秒までです。ところが危険な不整脈のなかには、いつ現れるか、どのくらい続くのか予測できないものがあるのです。そうした不整脈を正確に診断するためには、ホルター心電計という機器を、24時間から1週間以上も装着し続ける必要があります。健診の心電図検査だけで見つかる可能性は、高いとは言えません。