カーリング娘の活躍から何を学ぶか―日本的経営の新側面と笑顔の安全保障
日本的経営の新側面・「そだねー」
カーリング娘の笑顔が海外メディアでも評判になっていることは、東日本大震災のときの避難生活者の粛々とした態度が評判になったことを思い起こさせた。どんな状況においても、チームの和を保つことを第一に考える日本人の性格である。これは政治や経済における日本人のリーダーシップとガバナンス(統治能力)の欠如が批判され、国民のメンバーシップとガバナビリティ(統治される能力)が評価されることにつながる。 通常、カーリングではスキップが司令塔として強いリーダーシップを発揮するのだが、日本のカーリング娘はすべて相談主義である。「そだねー」という言葉がその象徴だ。 日本経済が強いとき「何事も会議にかけ、ほとんど満場一致で決め、決まったことには一致団結」という日本的経営スタイルが国際的に評価された。しかしバブルが弾け日本経済が長期低迷を続けると、それが「時間ばかりかけて何も決められない」という非難に変わった。たしかに日本人の文化的性格として強い「情緒的一体性」というものがあり、筆者はそれを「天皇制を護持する島国の家社会」として、建築文化論のキーワードとしてきた。 近年はその「家社会」の弊害ばかりが目立つようになり、批判的な論考を書くことが多かったのだが、このカーリング娘の快挙は、再び「相談と和を尊ぶ」方式の長所に眼を向けさせることになるかもしれないと考えた。 重要なことは、その相談と和によって、何も決めないのではなく、即決するということである。彼女たちは責任を回避するためにグズグズと相談するのではなく、すべて平等に遠慮なく相談しながら即断即決して、個人的責任において行動し、最終責任と成果を共有するのだ。 つまり「相談・決断・責任」がセットになっている。 これをよく考えることが、日本的経営を新しい側面から見直すことにつながるのではないか。いわば「そだねー経営」だ。スキップの藤沢は、悲観的にならざるをえない局面でも、それをポジティブに転換して笑顔で対処することを訓練したという。メンバーのすべてにその精神が行き渡っていた。