柴咲コウさんに聞く、オールフランスロケに挑んだ映画『蛇の道』。
オールフランスロケで蘇るリベンジ・サスペンス。
黒沢清監督の最新作『蛇の道』は、1998年に劇場公開されたサスペンスのセルフリメイク。主役が男性から女性に、そして舞台が日本からフランスに変わっていて、柴咲コウさんは新島小夜子というミステリアスな人物を演じている。 「黒沢さんが以前フランスで撮った『ダゲレオタイプの女』を観て、その色合いが監督のテイストにとてもマッチしていて、ここに日本人が出たらどう映るのだろうと興味が湧きました。前々からフランスやフランス語にも魅力を感じていて、新しいことを学んでみたいと欲していたタイミングでもあったんです」 精神科医として働く小夜子は、8歳の愛娘を何者かに殺された男の復讐を手助けしている。事件に関わった疑いのある人物をふたりで拉致。人気のない倉庫に監禁して、真実を突き止めようとするのだが、献身的に協力する彼女の目的が見えてこないゆえに、不気味さと緊張感が漂っている。 【写真ギャラリーを見る】
柴咲さんは、撮影の半年ほど前からフランス語のレッスンを受けて、この難役に臨んでいる。 言葉の苦労はもちろんありましたが、役としては大前提のことでしたので。パリでひとりで生活している小夜子には、言葉だけでなく立ち居振る舞いなどにも強さを感じるような、説得力が必要だと思いました」 2カ月強にわたるフランス滞在中、役のように街に溶け込みたいと思い、柴咲さんはホテルではなくキッチン付きアパートで過ごすことを希望。ダミアン・ボナールやマチュー・アマルリックなど、名優たちとの共演も見どころだが、役者からもスタッフからも黒沢組であることの喜びと誇りが伝わってきたそう。 「監督を尊敬して、サポートして、成功させたいという気持ちが重なり合って、優しく協力的な現場でした。演出に関してはそこまで多くを語らず、正解を押し付けることもなく、だからといって放置されるわけでもない。自由だからこそ、自分がないと居心地が悪いだろうなと思ったので、フランス語のセリフと動きがピタッとくる瞬間を、ひとつひとつ探していく必要がありました」 王道の復讐劇のなかに、あらゆる感情が渦巻いている本作。 「リメイクではありますが、舞台が変わればやっぱり別の作品という印象です。それくらい、フランスが似合っているなあと思います」