アメリカ挑戦中の太田格之進がIMSA公式テストでアキュラを初ドライブ「思った以上にうまく走ることができた」初日走行後に聞く
スーパーフォーミュラで最後の2戦で2連勝を飾り、その翌日の月曜日にアメリカに飛び立った太田格之進が、11月15日、フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで開催される2025年に向けたIMSAプレシーズンテストの初日に参加した。初めて実践で搭乗したアキュラARX-06の感触など、初日走行後の格之進に聞いた。 【写真】太田格之進のアキュラ・メイヤー・シャンク・レーシングにはローゼンクビスト(中)など日本でも同じみのビッグネームが揃う 2台で参加しているアキュラ・メイヤー・シャンク・レーシング(MSR)の93号車でデイトナを走行した格之進。まずは実車、LMDhのハイブリッドマシン、アキュラARX-06の印象と乗ったフィーリングから聞いた。 「まずはその大きさですよね。そしてかっこよくて、洗礼されているという印象をまず一番に感じました。低速と高速でのグリップの出方に違いがあって、ダウンフォースマシンなので高速コーナーはかなり速いです。それに比べると低速コーナーの方は、耐久レース仕様でタイヤ自体のそのグリップは高くないことと、クルマもそこそこの重量があるので、低速の走らせ方が難しいです。フロントタイヤはすぐにロックするので、グリップを安定して出して、低速でロックさせないようにブレーキングすることが難しいと感じました」 装着するミシュランタイヤの特性も経験の少ない格之進、実践で初めてのマシン、そしてサーキットと、初めて尽くしとなったが、その経験の差とは別に、ベテラン勢でも今回のテストのコンディションは難しかったようだ。 「今日一緒に乗ったドライバーたちは世界でもトップドライバーばかりで、そのドライバーたちも結構ロックして飛び出していて、安定してラップを刻むことに対しては神経を使わないと、簡単にラップタイムを落としてしまう難しさがありました。ストレートはかなり速くてデイトナだと320km/h以上出るので、スーパーフォーミュラとかGT 500に比べると特性が全然違います。タイム的にはレギュラー陣と変わらないタイムを出すことができたので問題ないかなと思っていす。あとはトラクションコントロールや電子制御や走らせるための手順も、電気で発進してエンジンがバンッてかかるとか、かなり複雑なので日本ではあまり経験することのないマシンだなと思っています」 MSRは今回、60号車(トム・ブロンクビスト、コリン・ブラウン、スコット・ディクソン、フェリックス・ローゼンクビスト)と93号車の2台を走行させており、格之進は93号車の4人目としてエントリー。他の3名(レンガー・バン・デル・ザンデ、ニック・イェロリー、アレックス・パロウ)のチームメイトたち、そしてチームの印象はどのようなものだったのだろう? 「まず想像していたよりも、チームの人数がめちゃくちゃ多いです。何人いるんだろうって思うぐらい(笑)、本当に人が多いことにびっくりしましたね。そして仕事の役割が分担されているということですね。日本だとひとりのエンジニアやメカニックがいろいろな仕事をしていますが、こちらはたとえばシートベルトの長さ調整はあの人だとか、データのその部分はあのエンジニアだとか、本当に細かい部分で役割が分担されています。ひとりひとりが自分の仕事、そしてその細かく分担された仕事に対してプロフェッショナルにやっているところに本当に驚きました。雰囲気はすごくみんな明るくて、その中で仕事を一生懸命やるという、しっかりとメリハリがあって頼れるチームだなと思っています」 一緒に走るチームメイトたちの名前には、日本でも名の知れたそうそうたるメンバーが並んでいる。 「みなさんご存知のように、インディカーで何回もチャンピオンを獲っているスコット・ディクソンだとか、日本でも馴染みのあるローゼンクビスト、パロウだとか、本当にトップドライバーしかいない中でみんな速いですし、ドライビングもいろいろとお互いに切磋琢磨できるドライバーたちだと思いす。でも、一緒にご飯食べたり、一緒にドライビングについて話し合って、一緒に(走行)動画を見たり、すごくフレンドリーです。走りに対しては全員がプロフェッショナルにみんな貪欲にやっているのですけど、それ以外の部分に関しては、お互いの関係性をしっかりと確立していくために、みんな明るくて、まだ揃って1日目なんですけど、まったく変な距離感もなく、本当にフレンドリーに楽しくやっているという感じですね」 初日のトップタイムはチームメイトでもある60号者がマーク、太田格之進たちの93号車はトップとコンマ2秒差の5番手タイムとなった。初日の格之進はどのようなメニューで走行したのだろう。 「初めてコース、初めてのクルマだったので、まずは慣れることに注力しましたが、結構すぐタイムが出たので、そこからは走行中のエネルギーマネジメントや、制御系のステアリング操作を細かくやっていきました。1回目の走行からクルマへのフィードバックを求められて、それに適用しながら走りました。明日はもっと細かくなっていくと思います。あとは、ルール(の理解)やピットに入ってくる時の手順もやっていきました」 これまで事前にシミュレーターやテスト走行などで経験を積んできたが、初めてのデイトナのコースはどのように感じたのか。 「比較的シンプルで、シミュレーターでも200周とか300周以上走ってきているので、コースに対しての難しさは感じなかったですが、バンクは本当に普段感じる横Gではなく、縦Gを感じるのが面白いなと思いました。日本にないバンピーさがあって、結構クルマが跳ねます。バンプでタイヤのグリップが増減してしまうところを上手くグリップを伝えて駆動を伝えて速く走らせるところは、日本のコースにはあまりない難しさがあるかなと思いました。他のドライバーに聞くと『デイトナが一番マシだよ』というぐらいだったので、日本との違いは驚きました」 「難しいコーナーは1コーナーと、バスストップという最後のS字です。特に1コーナーは320km/hオーバーから右側の壁ギリギリを使ってそこから切り込んでいきながらフルブレーキング、本当に簡単にロックしちゃいます。本当に簡単にロックしちゃってインにつけなくなってしまうと、全然戻ってこれないし、タイムを大きく落としてしまいます。ブレーキングを手前にするとその分タイムを失ってしまうので1コーナーが一番難しいです。その部分はシミュレーターとはかなり近いなというふうに感じました」 改めての初日の手応え、そして2日目の走行に向けてはどのような課題で取り組むことを考えているのか。 「自分が思った以上に、初日からうまく走ることができたと思っています。一発の速さとロング、両方で自分としては、想定以上の結果を出すことができたので、より詰めていきたいと思います。よりマシンの複雑なシステムを使いこなして、能動的に速さやマネジメントにつながるシステムに慣れていきたいです。Acura勢は(テスト初日)上位にいますが、チームの中ではセットアップを詰めないといけないという話をしています。しっかりチームでブリーフィングして、明日一日を通してクルマをどんどん良くしていけたらと思います。あと今日はLMP2とLMDhだけでしたが、明日からGT3も走ります。台数が一気に増える中でのトラフィックですよね。トラフィックへの対処という部分は、やっぱりすごく大きくなると思うし、しっかりやっていって、即戦力になることをアピールして終わりたいなというふうに思います」 まだ初日ながら、大きな手応えと自信を感じた様子の太田格之進。今後を考えると、60号車のメンバーはすでに4人が発表され、このテスト直前には93号車も3人目のドライバーが発表。アキュラ・メイヤー・シャンク・レーシングとしては、最後の93号車の4人目のひと枠だけが未定の状態となっている。その最後のひと枠を奪えるように、格之進は2日目の走行でもしっかりアピールできることを期待したい。 [オートスポーツweb 2024年11月16日]