「もし井上尚弥と戦わば――」。東京ドーム決戦を現地で見た世界バンタム級王者・中谷潤人に聞く!
中谷 まず、「井上尚弥選手でも倒される」ということ。同時に「倒された後でも、しっかりと自分のボクシングを相手に叩きつけられる」ということ。たとえダウンを奪われても冷静に立て直して、自分本来のボクシングを全うできる尚弥選手の凄さを改めて実感しました。 ――現地では、井上尚弥という選手を、将来対戦するかもしれない相手という想定で見ていましたか? 中谷 そうですね。ネリ選手が(自分と同じ)サウスポーだったのでより想像しやすかったですし、自分ならば勝利するためにはどう戦略を立てるか、と学べる部分もたくさんあったので、良い機会をいただけたと思いました。 ■モンスターと対峙したら「自分であればもっと...」 昨年9月18日のアルヒ・コルテス戦を会場で観た際、美しい軌道を描く日本人離れしたパンチの使い方、技術の引き出しの多さに魅了された著者は、以降定期的に、中谷の所属するM.Tジムに通い取材を続けている。 普段からサンドバッグやミット打ちよりも、実戦に近いスパーリングが中心。時には、怪我で視界が塞がれた場合や、拳を痛めた場合など、最悪の事態を想定したスパーリングもする。また、本来のサウスポースタイルからオーソドックスにしたり、ラウンドごとに至近距離、遠距離と戦法を変えたり、1ラウンド5分でスパーリングをしたりと、ありとあらゆる「実験」を繰り返していた。 そして、井上vsネリ戦を観戦した直後の今回の取材では、右腕の使い方に新たな工夫を感じた。 「もし井上尚弥と戦わば......」 現時点でどのように考えているのか、聞いてみた。 中谷 ネリ選手は最初から、リスク覚悟で攻撃的に仕掛けていきました。尚弥選手から見れば、ネリ選手が自分を倒しにきたから逆に倒せた。自分であれば、もっと前の腕を使って焦(じ)らすと言うか、尚弥選手が積極的に前に出てくることはわかっているので、そういう場面を増やしていくかもしれません。 尚弥選手を相手にひとつの戦法では、勝利には導かれない。さまざまなスタイルのボクシングを高いレベルでできるようにならなければ、試合をコントロールできない。それは強く感じています。 ――有識者やファン問わず、尚弥選手との将来的な対戦を期待する声も多く聞かれるようになりました。中谷選手自身はそれをどう捉えていますか?