1週間泊まり込みで家事や介護…60代家政婦の急死は「労災」、遺族が逆転勝訴「多くの方を幸せにする判決だ」 東京高裁
家政婦と訪問介護ヘルパーとして働いていた女性(当時68歳)が亡くなったのは、長時間労働が原因だとして、女性の夫が国を相手に労災認定を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁(水野有子裁判長)は9月19日、遺族側の請求を棄却した一審・東京地裁の判決を取り消し、労災を認める判決を言い渡した。 住み込みの家政婦などの「家事使用人」は、労働基準法が適用されず、労災の対象外とされているが、厚生労働省の通達で、雇用されて「指揮命令」を受けている場合は労基法の適用対象となるという扱いがされてきた。 2022年9月の一審判決後、厚労省は2024年2月に「家事使用人の雇用ガイドライン」を策定。同年6月には家事使用人を「労働者」として労働基準法・労災保険を適用する方向で法改正の調整に入ったとも報じられ、高裁がどのように判断するのかに注目が集まっていた。 この日の判決後に開かれた記者会見で、女性の夫は「家事や介護の仕事をしている多くの方を幸せにする判決だったと思う」と話した。代理人の指宿昭一弁護士も「個人家庭で働く家政婦に労基法を適用して過労死を認定した初めての判決ではないか。正しく中身のある判決だ」と高く評価した。
●住み込みで連続勤務後、低温サウナで倒れる
判決などによると、女性は2013年8月、要介護高齢者向けの居宅介護支援サービスや家事代行サービスを展開する都内の企業に入社。家政婦として勤務し、2015年5月からは訪問介護ヘルパーの仕事もおこなった。 女性は2015年5月20日~27日朝まで、家政婦と訪問介護ヘルパーとして、認知症で寝たきりの要介護者のいる家庭に勤務。27日夜、私的に訪れた低温サウナで倒れて救急搬送されたが、急性心筋梗塞のため亡くなった。 夫は2017年5月、渋谷労働基準監督署に労災を申請した。労基署は、女性は労働基準法116条2項の「家事使用人」に該当するため、労災の適用除外になるとして、不支給決定をした。その後の審査請求、再審査請求も退けられた。