トランプ「反・気候変動」時代到来で思い出すべき、京都議定書での日本の過ち──蟹江憲史教授
「日本が脱炭素でルールメイキングをできるチャンス」
――日本は前回の反省を生かし、アメリカに追従すべきではないと。 蟹江 そう思います。日本が脱炭素でルールメイキングをできるチャンスが回ってくる。アメリカの離脱に関して、そういう視点を持てるかどうかだと思う。 ――アメリカには国の規制と別に、州ごとの独自の規制がある。例えばカリフォルニア州は、自動車の排出ガス規制で世界の最先端を走っている。トランプ政権下でそうした州の動きはどうなるのか。 蟹江 カリフォルニア州やニューヨーク州を含め、地域間のネットワークの重要性は増していくだろう。州レベル、都市レベルのイニシアチブが消えることはない。世界的な傾向としても、ローカルのつながりで学び合い、気候変動対策を強化していく動きは強くなっている。トランプ政権になっても、それは変わらないだろう。 それでも、先ほど言った国際交渉の分野。それから、米連邦議会も共和党が取ったので、温暖化対策関連の法律が通りにくくなることが予想される。そうなると、(パリ協定から離脱すれば)口を出せなくなることと同時に、対策のための資金もアメリカから出てきづらくなる。 脱炭素の流れは変わらないが、資金面でも、グローバルなレベルで遅れが生じることは避けられないだろう。2020年からの10年間が重要だと(国連は)言ってきたが、これからの10年間が「失われる」としたら、その影響は大きい。
「COPは近年、エキスポ的な情報交換の場にもなっている」
――COP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)について聞きたい。2024年はアゼルバイジャンでCOP29が開かれ、2025年はブラジルでCOP30が開催される。これまでにいくつか、京都議定書(1997年、COP3)やパリ協定(2015年、COP21)などのハイライトがあったが、今後もCOPはルールメイキングの場として機能し続けるのか。それとも、先進国と途上国の間での対立も実際に見られるし、影響力は弱まっているのか。 蟹江 COPは1年に1度、(専門家や政策担当者らが)集まってルールを決めたり検証したりするメカニズムの1つであり、それは気候変動枠組み条約が続く限り今後も続いていく。ただ、私も以前は毎年行っていたが、ここ7~8年は行っておらず、その間に雰囲気はかなり変わったと聞いている。 近年は国際交渉のサイドイベントとして、ビジネスの関係者が集まるエキスポ的な情報交換の場にもなっているようだ。実際に見ていないのでなんとも言えないが、交渉があまり進まない一方で、ビジネスの側面は活発なので、私のような研究者よりも、金融関係とかメーカーの人がCOPに行くという話をよく聞く。それはパリ協定以降、ビジネスやファイナンスといった政府以外のところも気候変動対策に力を入れ始めたこととも関係している。 そうした現状があり、今後もそういう場として機能し続けるのではないか。