〈詳報=県最低賃金953円答申〉全国一律目安を6円上回り決着、過去最大の上げ幅 経営者委員は全員反対 鹿児島地方審議会
鹿児島地方最低賃金審議会(会長・松枝千鶴公認会計士)は9日、2024年度の鹿児島県の最低賃金(最賃)を現行の時給897円から56円引き上げ、953円にするよう永野和則鹿児島労働局長に答申した。物価高や地域間格差の是正を踏まえ、昨年度の44円を上回り過去最大の上げ幅となった。早ければ10月5日から適用される。 労働者には「大きな前進」だけれど…最低賃金改定の目安額、大都市圏と並ぶ「50円増」に地方の中小企業は頭を抱える
中央最低賃金審議会は7月、引き上げ目安額を全国一律で50円と示しており、6円上回った。 鹿児島県の現行の最賃897円は、高知や宮崎などと並び全国40位で、金額では下からは3番目に低く、最も高い東京都の1113円とは216円の開きがあった。東京は5日、50円増の1163円を答申しており、差は6円縮まり210円となる。 県内で最賃引き上げに伴って時給が上がるのは、現在の時給が953円未満の労働者。鹿児島労働局によると、7月25日時点で5万7742人が対象になる。 同審議会は、公益、労働者、経営者の代表委員の各5人で構成され7月に専門部会で議論を開始。当初は労使間で28円の隔たりがあった。8月9日の4回目専門部会では労働者側63円、経営者側45円と18円差まで縮まったが折り合わず、公益委員が56円を提示。本審の採決の結果、公益、労働者委員の9人が賛成、経営者委員の5人が反対し、賛成多数で決定した。
採決後、経営者側は持続的な賃上げが可能な環境整備などを求め、同様の付帯決議を答申に盛り込んだ。 ◇最低賃金 パートやアルバイトなどの非正規労働者を含む全ての労働者に適用される時給の下限額。下回った企業には罰金が科される。厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会が、引き上げの目安額を示し、各都道府県の審議会が実際の額を定める。毎年度、労働者の地域ごとの生計費、賃金、企業の支払い能力を考慮して改定する。諸外国と比べて低水準にあることや、地域間の格差が課題とされている。2023年度の最高額は東京の1113円で、最低は岩手の893円。鹿児島の897円は高知や宮崎などと並び全国40位で、金額では下からは3番目に低い。
南日本新聞 | 鹿児島
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