築100年の畳工場で「恩返し」 長崎・東彼杵「hinata 食堂」 地域おこし協力隊の女性が開業
長崎県東彼東彼杵町蔵本郷の築100年以上の畳工場跡が、交流の場に生まれ変わった。28日、プレオープンした「hinata(ひなた)食堂」。2年前、埼玉県から移住した斎藤節子さん(40)=同町彼杵宿郷=が「お世話になった地元の皆さんに恩返ししたい」という思いで開業した。初夏の風物詩「そのぎ茶市」で知られる彼杵宿通りで、特産のそのぎ茶と和菓子「くじら焼」を振る舞う。 「災害が少なく、都会すぎない田舎で子育てがしたい」。そんな夢を抱いていた斎藤さん。条件に合った空き家が見つかり、2022年4月、町の地域おこし協力隊員に着任。3人の男の子とともに移住し、子育て環境や移住・定住に関する情報を交流サイト(SNS)などで発信している。 移住希望者を案内するうちに、そのぎ茶を気軽に飲めたり、昼食時以外に茶飲み話ができたりする飲食店が少ないことに気づいた。空き家だった畳工場跡を友人の親族から借り、川棚町の空間デザイナー、田山勇輔さん(31)らが改修。趣ある看板や階段たんす、土間の石だたみは残した。壁板は、波佐見焼の窯元が完成前の器を運ぶ時に使う皿板を再利用した。 開店にあたり、地域おこしに取り組む「東彼杵ひとこともの公社」と九州電力が共同開発した「くじら焼」の製造機を譲り受けた。くじらの形をした、たい焼き風の和菓子が看板メニューを飾る。 話し好きだが、赴任前は知らない土地での暮らしに不安だった。しかし、地域の人が子どものために野菜や魚を分けてくれたり、悩みに共感してもらったりしたことが温かかった。心配は希望に変わり「都会にはない気遣いを感じた」。 協力隊の任期が来年3月末まであり、当面はそのぎ茶とくじら焼を販売する喫茶に限定。「ゆくゆくは地元のお母さんから教わった料理を取り入れた定食屋さんにしたい」。営業時間は午前9時~午後3時。不定休。問い合わせは斎藤さんのインスタグラム(@higashisonogi_se)。