「インバウンド」客数・消費額とも過去最速・最高を記録も…今後の課題は?
2024年の訪日外国人旅行客数は10月までの累計で、過去最速で3000万人を突破(政府観光局)。また消費額では9月時点の累計で5兆8000億円超え(観光庁)といずれも過去最高を記録し、コロナ禍前を大きく上回る勢いで増加傾向が続いている。 【写真】2時間待ちもザラ!東京タワーの「映え」スポット…訪日客殺到、ここは大丈夫? 10月の訪日外客数は331万2000人で、前年同月比31.6%増加、過去最高だった24年7月(329万2602人)を上回り単月過去最高を記録、コロナ禍前の19年同月比では32.7%増加している。 一方、訪日外国人旅行消費額は、4~6月期に四半世紀で初めて2兆円を突破し、最新の7~9月期も1兆9480億円と、前年同期比で41.1%増加、19年の同期比で64.8%も増加しているのである。 ■訪日の割安感が人気 インバウンド需要の中でもとくに消費額の増加が特筆される。消費額の増加率(64.8%)は外客数の増加率(16.9%)を大きく上回り、訪日客1人当たりの消費額は大幅に増加。消費額はコロナ禍前の7~9月期の16万2860円から23年同期は20万9228円、24年同期にはさらに22万3195円と増加しているのだ。ニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員が、インバウンド需要の拡大の背景をこう説明する。 「円安と国内のインフレ低水準が訪日客の大きなメリットになっています。24年5月時点の国内消費者物価指数(CPI)は19年と比較して約7%上昇していますが、豪州や欧米は20%前後の上昇です。ただ、欧米は物価上昇に合わせ賃金水準も上昇しています。訪日の割安感がインバウンド需要の拡大につながっていると考えます」 コロナ禍以前は爆買いする中国人観光客が都内百貨店に列をなしていた。インバウンド消費行動はこうした「買い物」から宿泊費、飲食費、娯楽などサービス消費へとシフトしてきている。19年7~9月の訪日外客数は中国がトップで全体の36.9%を占めていたが23年同期には韓国、台湾に次ぎ15.1%まで落ち込み、4割を超えていた買い物消費は2割まで低下した。代わって欧米からの訪日客が増え、モノ(買い物)消費から体験型コト消費(宿泊、飲食、娯楽サービス)へと消費に変化が見られる。(24年の中国訪日客は回復)。 「24年の訪日外国人旅行消費額は8兆円が視野に入っています。今後のインバウンド消費の拡大には、富裕層向けの質の高いサービスや、日本ではサービス不足が指摘されるナイトタイムエコノミー(夜間消費)など、新たなサービス需要の開拓が期待される」(前出の久我氏) 観光地でのオーバーツーリズムが問題視されるが、企業と自治体による新しい街づくりが需要の拡大の鍵になる。 (ジャーナリスト・木野活明)