世界需要低迷で下落圧力が強まる原油価格、この先どうなる?二大産油国=米国とサウジアラビアの楽観できない事情
■ 物価高でガソリン需要にブレーキ OPECは11日、「世界の今年の原油需要は日量225万バレル増加する」とする強気の予測を据え置いた。第1四半期の原油需要は前年に比べて日量5万バレル減少したが、下半期はV字回復するという見立てだ。 世界最大の原油需要国である米国では夏場に向けてガソリン需要が拡大するのが常だが、今年は異変が起きている。 5月31日時点の米国のガソリン需要は前年比2%減の日量894万バレルにとどまっている。物価高の長期化で可処分所得が減少しており、例年のようにドライブ需要が盛り上がらないのではないかと言われている。 製造業が不振なことから、軽油需要も低調だ。5月31日時点の軽油需要は前年比5%減の日量371万バレルとなっている。 原油在庫、ガソリン在庫ともに増加基調にあり、原油価格の下押し圧力となっている。 OPECが期待している中国の原油需要の雲行きも怪しくなっている。
■ インドも原油需要が伸び悩む可能性 中国の5月の原油輸入量は前年比8.7%減の日量1106万バレルだった。1~5月の原油輸入量も前年比1.2%減の日量1100万バレルとなっている。 長引く不動産不況が原油需要に悪影響を及ぼしつつあることがみてとれる。 中国の3大国有石油企業の1つである中国石油加工集団(シノペック)が5月末、「同国の原油需要は2027年以前にピークを迎える」との見方を示しているのも気がかりだ。 主要国で唯一気を吐いているのはインドだ。 3月の石油製品需要は前年比3.5%増の日量557万バレルだ。だが、3期目に入ったモデイ政権は連立を組む政党への配慮で保護主義を強めるとの懸念が生じており*1 、原油需要が今後伸び悩んでしまうかもしれない。 *1:「インドに保護主義リスク」 仏投資銀エコノミスト(6月11日付、日本経済新聞) 筆者と同様、弱気の見方をしているのは国際エネルギー機関(IEA)だ。IEAは12日、「世界の今年の原油需要は日量96万バレル増だ」としている。需要が伸び悩めば、中東地域などの地政学リスクが上昇しない限り、原油価格は軟調に推移することになる。 IEAはさらに「世界の原油需要は2029年にピークを迎える一方、米国を筆頭に原油供給は拡大するため、2030年の原油市場は大幅な供給余剰となる」との予測を立てている。 だが、長期的に原油価格の下落トレンドが続くかどうかは、予断を許さない。