ジムに巨大スクリーン設置、バーチャル背景の配信も人気 テクノロジーで進化するフィットネス〝最新事情〟
国内で独自進化した“暗闇系”
もともと“暗闇系”として、ボクササイズなどと共に2010年代に日本でも知名度を上げた暗闇バイクフィットネス。その起源はアメリカで、2000年代からSoulCycleなど屋内でスピンバイク(ロードバイクのように前傾姿勢でハンドルを持ち、ペダルを漕ぐフィットネスバイク)を使用するサービスが流行していました。 それを日本にいち早く持ち込んだのがFEELCYCLEです。海外でのブームはピークを過ぎており、例えばSoulCycleは15年に新規株式公開(IPO)をするとアナウンスし、1億ドルを調達するための申請をしていましたが、18年にこれを「市場状況」を理由に取り消すなどしています。 一方、国内では映像店舗のような新規出店を続け、会員数も24年9月時点で都度利用を含め約20万人(同社による)に上るといいます。20年時点では利用者数を10万人としており、コロナ禍を経て10万人を積み増した※ことになります。国内でフィットネスジムの倒産が最多になる中、拡大を続ける珍しい事業者です。※トライアル入会から月額会員ではなく、都度利用のチケット会員になる場合を含む。 16年から開催するリアルイベント「LUSTER(ラスター)」では、ライブなどに使用される会場を数日にわたり貸し切り、ライブレッスンを行います。24年4月に開催された「LUSTER 2024」は幕張メッセで開催、全11公演で、1公演につき700~900人が参加し約1万人を動員、チケットは1公演あたり1万円以上でした。 映像店舗やリアルイベントといった要素は、起源となった海外のバイクエクササイズにはないものです。同社によれば、どちらもスタジオの照明や演出などを発展させていく中で、独自に進化していったものだそう。その時々の同社のやりたいことを実現した結果、ユニークなフィットネス文化が生まれたとみることができます。
オンライン化は世界的な潮流
そんな同社は近年、自宅にオリジナルバイクと専用タブレットを設置して行うオンラインバイクフィットネス「FEEL ANYWHERE(フィールエニウェア)」に注力しています。21年8月の先行販売時には、26万9000円の専用バイク1000台が完売するなど、高い期待度でFEELCYCLEの既存会員中心に迎えられました。 FEELCYCLEの人気インストラクターのレッスン約300種類をオンデマンドとライブで受講できるサービスです。バイクは自宅での利用を想定して設計され、低騒音・低振動を実現するように、内部の構造をスタジオ用から変更。一体型モニタは独自に開発したもので、23.8インチの大画面かつ4基のスピーカを搭載しています。 オンラインフィットネスはコロナ禍で一時もてはやされ、現在は下火になりつつありますが、バイクフィットネスのオンライン化の流れは、既定路線だったと言えます。その理由は、海外で「フィットネス業界のApple」「次のNetflix」などユニコーン企業として評されていた「Peloton(ペロトン)」です。 PelotonはSoulCycleのようなインドアバイクエクササイズのブームを背景に、それをいち早くオンライン化することで、2010年代後半に一躍、時のサービスになりました。 19年9月にIPOし上場企業となり、20年12月には株価が160ドル以上をつけるなどピークを迎えました。しかし、コロナ禍で株価が乱高下した後、現在は経営再建中です。 海外ではPelotonの成功を受け、SoulCycleなど既存の事業者も一時、オンライン配信に乗り出し、Pelotonとシェアを争う状態でした。FEEL ANYWHEREも、コロナ禍以前から計画されていた事業でしたが、コロナ禍で事業計画にも乱れが生じ、サービスローンチがずれ込んだと言います。