「メディア業界は連携を」 ハースト婦人画報社が脱炭素に向け呼びかけ
WWD:具体的に脱炭素に向けて工夫している点は?
池原:23年からは「グリーン電力証書」を使い、全14媒体の定期刊行紙における印刷・製本にまつわる電力に再生可能エネルギーを適用している。そのほか、プラスチック素材を使用していた雑誌の表面加工を変えたり、付録のプラスチック梱包を減らしたりして、雑誌事業におけるプラスチック使用量も減らしている。22年には19年度比で80%減らすことができた。国内出張方針も変えた。GHG排出量の高い飛行機の使用は控え、移動時間が4.5時間以内の場合は電車を使ってもらうように呼びかけている。実際に、実務をどう変革していくかは非常に難しい。でもそこで思考停止せず、できるところから1つずつ地道に実践している。
WWD:社外に向けてはどのように協力を仰いだ?
池原:そこは大変であると同時に特に重要な部分。私たちは製造業の側面もあるものの、フットプリントを計ると自社で削減できる部分はわずか1%しかない。残りの99%は製紙会社、印刷会社などのサプライヤーの協力なくしては削減できない。当初サプライヤーの方にGHG排出量のデータを求めると、「重要なのは分かるが、どこから始めればよいかわからない」「社内のコンセンサスをとる事に時間がかかる」といった反応が多かった。雑誌製造に関してのフットプリント算定は、前例がなく分からない部分や不透明な部分も多々あった。各社と協力し一歩進んでは半歩戻り、と互いに学び合いながら進めてきた。今振り返ると、何も分からない地点から諦めずに取り組んできたチームのような意識がある。
WWD:社内では環境負荷の削減とビジネス成長のバランスについて、どのような議論がある?
池原:サステナビリティの概念は、環境面だけではなくビジネスの持続可能性も踏まえて議論すべきだ。そうでなければ極論、雑誌やイベントもいらないのではないかという話になりかねない。両輪で捉えた上で私たちが今注力しているのは、排出してしまう項目をいかに努力で減らせるか。例えばイベントの会場設備も、新しく作るのではなく既存のものを再利用できないか、廃棄物を減らしつつどう魅力的な空間を作れるかを考える。そうした創意工夫ができるチームに育つことが今後社の強みにもなる。