「メディア業界は連携を」 ハースト婦人画報社が脱炭素に向け呼びかけ
WWD:26年までに広告主に対して、「脱炭素支援広告プラン」を提供する計画と聞いた。
池原:これは広告出稿やイベント実施におけるGHGを算定し、できるだけ減らしていくという広告プランだ。現在実現に向けて、事業部ごとにGHG排出量を算定し削減アクションプランを練っている最中だ。
WWD:実際にクライアントから「脱炭素支援広告」プランへの要望があるのか?
池原:過去に欧米のラグジュアリーブランドから、別冊制作にかかったCO2排出量を報告してほしいと言われたことがあった。多くはないが、こうした声は増えていくはず。ハーストのイギリス支社のサステナビリティ担当者からは、CO2排出量の報告が請求書と一緒に提出が求められるようになる時代も近いだろうというような話も聞く。そうした傾向も踏まえ、少なくとも算定できる状態を整えておくことは急務だろうと考えた。
全社員、サプライヤーまでを巻き込む難しさ
WWD:現在各部署でどんな工夫を?
池原:まずは、社員一人ひとりが理解を深めることが大切。イベントや雑誌製造におけるGHG排出の算定に加え、取材や撮影などのコンテンツ制作における算定も始めている。全編集部において、少なくとも1件の取材やタイアップにかかるカーボンフットプリントの算定を実施してもらった。日々の仕事のどんな部分に、どれだけのGHGが出ているのか、自分の手を動かして測定することでカーボンフットプリントの仕組みが理解できる。こちらから、GHG排出量の高いタクシー利用をなるべく控えてくださいといった呼びかけもするが、仕組みを理解すれば自発的に工夫ができるようになる。また昨年からは、気候変動やグリーンウォッシュについて理解を深める研修を強化している。全社員必修で実施し、当社の社員としての最低限のリテラシーとして身につけてもらうようにしている。
WWD:社員全員の理解を得るのにはハードルもあったのでは?
池原:メディアに携わる人間として、全く興味がない人は少なかったように思う。とはいえ、普段の仕事に加えて、GHG算定の業務や研修を受けてもらったりするには、なかなか時間が取れないといった反応はあったし、直近の売り上げに直結するわけではないなか優先順位を上げてもらうのは難しかった。意識したのは、脱炭素の取り組みが社員にとっても得だと思ってもらえるようコミュニケーションすること。今ではサステナビリティに力を入れていることが、社員の誇りにつながるようになってきた実感があるし、若手の社員からサステナビリティが当社の強みの1つとして自然に上がってくるようになった。