意見が合わないときに「でも…」より効く接続詞。トヨタグループの人たちが使う同意や賛同をしない「受け止め話法」
仕事は自分一人の力だけでは成し遂げることはできない。 社内外含めてさまざまな人と連携しながら取り組むことが求められる。 【画像】どこでも応用が利く基本が詰まった『トヨタで学んだハイブリッド仕事術』(青春出版社) しかし、そんなときに生まれるのが「意見の食い違い」だ。 どうすれば、意見が合わない相手も上手に巻き込んで、成果を上げることができるか。森琢也さんの著書『トヨタで学んだハイブリッド仕事術』(青春出版社)から一部抜粋・再編集して紹介する。
受け入れるのではなく受け止める
仕事で大きなプロジェクトに取り組むときなど、チームを組んで対応することもあるでしょう。 そんなとき、チームの中に自分と「価値観が合わないな」という人がいると、それだけでストレスを感じてしまうものです。 相手の意見に、つい「でも」や「しかし」「そうなんですけど」と反論したくなってしまうこともよくあります。 特に仕事の場面では“合わない”相手ともうまくやっていかなければと思い、相手の話を「聞き入れよう」、相手のことを「少しでも受け入れよう」と無意識に頑張ります。 そのせいか、「そこは納得できるが、でも、しかし、ちょっと待てよ……」と考えてしまい、いわば「心理的なアレルギー反応」を起こしてしまう場面も生まれます。 こうした価値観の異なる人は、極力避けてやり過ごしたいものですが、同じ職場やチームのメンバー、重要な取引先相手であればそうはいきません。 むしろ、そんな人でさえも自分の味方に引き込んでしまうような人間関係を構築することが大切です。 実際にトヨタグループで仕事ができる人たちは、こういったコミュニケーションがとても得意でした。具体的に、どのように対処していたのか? 私が上司や先輩から学んだポイントは、意見や価値観の異なる相手の話は「受け入れる」のではなく、「受け止める」、という対応です。
「受け止める」は話を聞くが同意賛成でない
例えば、職場の新人の育成法について、考えや価値観の異なる人が、延々と自身の考えを主張しているシーンを想定してください。 相手の話を「受け入れる」ということは、「その通りですね」と同意や賛同、共感を示すことです。 真面目な人ほど、相手の話を「受け入れよう」と取り組む方が多いのですが、無理して「(自分と異なる考えを)受け入れよう」とすればするほど、心の中で拒絶反応が起きます。 自分と異なる意見や考え(=異物)を無理やり取り入れようとして、「いや、やっぱりこの考えには同意できない」「そこには賛同できない」となり、「心理的なアレルギー反応」が生じるわけです。 そして、つい「でも」「しかし」という反論が口に出てしまい、対立を生んでしまいます。 一方、相手の話を「受け止める」とは、相手の話をきちんと聴くものの「無理に同意や賛同」はしません。同意や賛同をしない代わりに「そうなんですね」と相槌を打つのです。 むやみに敵をつくらず、戦略的に人を巻き込み、価値観の合わない人も自分の味方にしてしまう、そんな人間関係を構築するためには、「受け入れる」以外に「受け止める」の選択肢を持ち、場面に応じて使い分けることがおススメです。 ビジネスの場面であっても、常に相手の意見や考え方を100%「受け入れる」必要はなく、場面に応じて「受け止める」だけでも、相手は「ちゃんと話を聴いてくれた」と安心し、議論を前に進めることができます。 また、食べ物同様に、自分に合わない意見や考えを無理やり取り込まず、手前に止めておくことで、アレルギー反応の発生を防ぎ、苦しくならずに済みます。