<STAP細胞問題>「検証実験」では論文の「不正」はわからない
理化学研究所は27日、都内で記者会見を開き、STAP細胞が本当に存在するかどうかを確かめるために行われている「検証実験」について、中間報告を発表しました。
「検証実験」中間報告のポイントは
検証実験の中間報告については、小保方晴子・研究ユニットリーダーとともにSTAP細胞を報告した丹羽仁史プロジェクトリーダー(現在は検証実験の研究実施責任者)らが説明しました。丹羽氏らは、論文に書かれている実験を22回行いましたが、論文に書かれているような結果は得られていないということです。 生物学の実験では、独特の「コツ」のようなことが必要になり、報告者以外の者が論文通りに実験を行っても、同じ結果をなかなか再現できないことがあります。そのため丹羽氏らは、小保方氏に「助言」を求めることになっています。また、丹羽氏らとは別に小保方氏自身も検証実験を行っています。 しかし、今回の検証実験の結果には、小保方氏の「助言」は反映されていない、と丹羽氏は言います。 というのは、実験総括責任者を務める相澤慎一・特別顧問によれば、小保方氏自身が行った実験結果はまだ「予備実験」のもので、「公表できる段階ではない」からだといいます。その話しぶりや表情は意味深でした。 理研は、来年3月末まで検証を続けることになっています。小保方氏は今年11月末まで検証実験を行う予定です。その過程で、一定の結論が出されるだろう、とのことです。
「検証実験」は「追試」なのか?
ところで、理化学研究所が使っている「検証実験」という言葉は、やや奇妙です。 その定義も、それを使う理由もはっきりとしません。論文に書かれているものと同じ材料を使い、同じ手順を行えば第三者も同じ結果を得られるかどうかを確かめる実験は通常、「追試」もしくは「再現実験」と呼ばれます。同じ実験で同じ結果が出る可能性のことを「再現性」と言います。再現性は科学の条件の1つともいわれ、それがなければ、その論文の科学的な価値はない、ということです。 今年1月、小保方氏らがSTAP細胞の作成成功を『ネイチャー』で発表した後、世界中の研究者たちがその追試に取り組みました。しかし成功の報告はありませんでした。 3月5日、小保方氏らは、実験の手順をより詳しく書いた「プロトコル」を発表したのですが、やはり成功の報告はありませんでした。3月20日には、小保方氏の共同研究者であるハーバード大学のチャールズ・バカンティも別のプロトコルを公表したのですが、同様の状況が続きました。 その間にも不正の疑惑が次々と浮上しましたが、理研は「検証実験」にこだわり続けました。相澤氏は、検証実験は問題の全貌解明に不可欠である、と説明したのですが、後述するように検証実験では不正の有無はわからないはずです。 論文が撤回された現在、検証実験の意義はないとの意見も多くあります。しかし、小保方氏はいうまでもなく、丹羽氏も論文の著者の1人です。「再現性」を確かめる「追試」であるならば、完全に独立した研究者が行わない限り、その結果は信頼されないでしょう。