勝っても微妙…パリ五輪代表はどうなる?男子100mは坂井隆一郎が12年ぶり連覇も参加標準記録を切れずワールドランキングに左右される代表切符争いは混沌
パリ五輪代表選考会を兼ねた日本陸上選手権の最終日が6月30日に新潟のデンカビッグスワンスタジアムで行われ、男子100mの決勝では、坂井隆一郎(26、大阪ガス)が12年ぶりに大会連覇を果たした。しかし五輪の参加標準記録を切ることができずワールドランキングに左右される五輪代表切符を巡る争いは混沌となった。果たして誰が残り2枠の男子100mの代表と4×100mのリレーメンバーに選ばれるのか? 【画像】スポーティな白黒コスチュームのラウンドガールが世界戦に華を添える
小雨が降り続くなかで、男たちはパリへの夢を見た。陸上日本選手権のトラック最終種目。男子100m決勝は8人のスプリンターが勝負の舞台に立った。そのなかで先制攻撃を仕掛けたのが前回王者の坂井だ。持ち味のロケットスタートで飛び出した。しかし、ライバルたちも食らいつく。最後は僅差の勝負となり、3人がほぼ同時にフィニッシュラインへなだれ込んだ。 勝者は坂井隆一郎。タイムは10秒13(-0.2)で、東田旺洋(関彰商事)と栁田大輝(東洋大)を0秒01差で下した。 「スタート自体は決まったんでけど、周りの選手も速かったので、後半は力むようなレースになってしまった。それでも押し切れたのは自分が成長した証かなと思っています。勝ちきれたことは100点です。自分のことを褒めてもいいんじゃないかなと思っています」 左アキレス腱に痛みのあった前大会は地元・大阪で涙の初優勝だったが、今回は強さを証明して、笑顔がまぶしく輝いていた。 2位と3位は大接戦となった。東田と栁田のタイムはともに10秒14。しかし、同タイム着差ありで、0秒005差で東田が競り勝った。 「自分のレースに集中してやりきったレースだったかなと思います」と胸を張った東田に対して、V候補だった栁田は「調子は良くて、前半もうまくいきました。でも最後の最後で詰めの甘さが出てしまいました。優勝してすんなり代表を決めたかったので、それができなかったのが一番の後悔かもしれません」と話すと涙があふれた。 4位はデーデー・ブルーノ(セイコー)で10秒25。3大会連続の五輪を目指した桐生祥秀(日本生命)は10秒26で5位に終わった。それでも、「今日は全力で走りました。そして負けました」と完敗を認めたうえで、「すごくワクワクしましたね」と久しぶりに〝全力疾走〟できたことがうれしそうだった。 坂井は2009年~12年に4連覇した江里口匡史以来12年ぶりの連覇を飾ったが、手放しで喜ぶことができない。パリ五輪代表が微妙な状況だからだ。 本人も「本当にランキングはギリギリだと思うので、ちょっとどうなるか分かりません。でも決まったら、パリに向けてもう一段階上げていきたい」と話していた。 男子100mの日本代表はサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)が内定済で、残りは最大2枠だ。 参加標準記録10秒00を突破して優勝すれば「即時内定」だったが、今回は誰も届かなかった。参加標準記録突破者がいない場合はワールドランキング(Road to Paris)でターゲットナンバー(56位)内に入っている選手が選ばれることになる。 ワールドランキングは期限内に開催された大会で獲得したポイントの平均スコア(男子100mは5レース)で決定。ポイントは記録と順位(大会のカテゴリーによってポイントが異なる)によって算出される。 大会前のワールドランキングでは今大会出場者のなかで栁田が最上位で、唯一〝出場圏内〟に入っていた。東田、桐生、和田遼太郎(ミキハウス)、坂井の順で追いかける展開だったが、日本選手権の結果で順位が変動することになる。 仮に先に名前を挙げた全員が〝出場圏内〟に入った場合は日本選手権の順位で日本代表が決定する。
【関連記事】
- 16歳の“逸材ランナー”ドルーリー朱瑛里の本当の実力とは?初出場の日本選手権では1500m決勝に進むも7位に終わる
- 「精神的な疲れ」と「不安」…15歳ドルーリー朱瑛里を出場辞退にまで追い詰めた”悪者”の正体…日本 陸上界の宝を異常なマスコミ攻勢や一部ファンの“暴走”からどう守ればいいのか
- なぜ男子100mで”エース”サニブラウンのまさかの”最下位失速”が起きたのか…ブダペスト世界選手権出場の可能性は?
- なぜ世陸4×100mリレーで東京五輪に続きバトンミス”失格”が起きたのか…お家芸復活に求められるものとは?
- “世陸”男子マラソンでメダルに迫った山下一貴はパリ五輪でリベンジを果たすことができるのか…日本の本当のレベルと懸念される代表選考レースMGCへの影響