『キャプテン翼』原作者・高橋陽一×稲本潤一 「南葛SC」Jリーグへの道「大ボスが登場」
――羨ましい限りです。まさに南葛SCはリアル『キャプテン翼』ですね。さて、本題に入りたいと思いますが、高橋先生はここまでの南葛SCの道のりをどのようにとらえていらっしゃいますか? ここまでは順調でしょうか? 高橋 いや、当初イメージとしては、もっと早い段階でJリーグにいけると思っていました(笑)。でも、そんなに簡単じゃないことは、やっているうちに分かってきました。 まず、もちろん勝たないことには上には行けないのですが、とにかく勝ち続けること自体が難しい。漫画だったら簡単なんですけど(笑)、実際はそうではないことを実感しています。結局は勝つ確率を上げなければいけないのですが、でも、そこには運もかなり影響することも分かってきました。そう思いつつ、それでも強いチームを作っていけば目標に近づいていけるとは感じています。 今年は関東サッカーリーグ1部に昇格して3季目なのですが、これまでの中では一番いい成績を残せています。過去2季は残留争いに巻き込まれたりしていましたが、一応、今年は同じようなことにはならないと思っています。まだ優勝の可能性も残っていますし、そこは最後まで目指していきたいですね。 稲本 確かに、今年は風間(八宏)さんが新監督に就任して、サッカーの質の部分がだいぶ変わったと僕も感じています。僕自身はかつて川崎フロンターレで風間監督のもとでプレーした経験があるんですけれど、選手をうまくするトレーニング方法であったり、コミュニケーションの取り方だったり、その辺りにとても秀でた監督なので、僕から見ても選手たちがうまくなってきているな、という印象があります。 なので、去年までは残留争いをする事態に陥っていましたけれど、このところ結果もついてくるようになって、少しずつ勝てる確率も上がってきています。風間監督の戦術も徐々に浸透して、チームとして力がついてきたと感じるようになってきました。 ――やはり風間監督から指導者として学ぶ部分は多いですか? 稲本 はい。風間さんは全部自分でやるタイプの監督なので、僕たちコーチ陣はもっぱら見ていることがほとんどです。それでも、自主練で選手たちがどのように成長していくのかとか、チームマネジメントの中で学ぶことがとても多い監督だと思っています。 高橋 もともと風間さんの前の(森一哉)監督も、風間さんの下でコーチを経験した指導者でしたので、ベースは変わっていないのですが、今年からはいよいよ大元に来てもらいました(笑)。 稲本 そう、ついに大ボスが登場したみたいな(笑)。 (つづく) 【Profile】高橋 陽一(たかはし・よういち)/東京都葛飾区生まれ。1980年、『キャプテン翼』(集英社)でデビュー。1983年にはアニメ化。同作品は日本でのサッカー人気はもとより、世界のサッカーの普及・発展に大きく貢献し、数多くの海外サッカー選手たちへも影響を与えている。現在でも世界中で愛され続けるグローバルコンテンツとなっている。2024年4月にシリーズの漫画連載を終え、同年夏よりWEBサイト『キャプテン翼WORLD』に掲載の場を移してネーム形式で連載を継続している。2023年にはアニメ最新作『キャプテン翼シーズン2 ジュニアユース編』の放送が開始され、海外でも順次放送されている。葛飾区よりJリーグ入りを目指すサッカークラブ「南葛SC」のオーナー社長を務めるなど、漫画家以外の活動も積極的に行っている。 稲本 潤一(いなもと・じゅんいち)/1979年9月18日生まれ。プロサッカー選手。ポジションはMF、DF。1997年にガンバ大阪のトップチームに昇格し、Jリーグ最年少(当時)となる17歳6か月でのリーグ初出場を記録。1999年に準優勝を果たしたFIFAワールドユースでは主力として活躍し、同年A代表にも初選出された。2001年にはイングランドプレミアリーグの名門アーセナルFCに移籍。2002年の日韓ワールドカップでは第1戦のベルギー戦、第2戦のロシア戦でゴールを決め、史上初の決勝トーナメント進出に大きく貢献。ブンデスリーガやJリーグでのプレーを経て、2022年より南葛SCに所属。2023年オフよりコーチ兼任。国際Aマッチ82試合出場、5得点。181cm・77kg
中山淳●文 text by Nakayama Atsushi