林陵平がプレミアリーグで今季も好調のアーセナルの進化を解説 「攻守4局面をしっかりデザイン」
【サカとハヴァーツが利いている】 ボール保持から攻撃の崩しのシーンですが、まずはサカですよね。 今季のサカは、ケガでインサイドハーフのマルティン・ウーデゴールや右SBのベン・ホワイトがいなくて、昨季サカといいコンビネーションを見せていたふたりがいない状況。それにもかかわらず、スーパーな活躍を見せています。 1対1であれば必ず相手をはがします。そこで基本的に相手はダブルチームで来るんですが、そこでSBがあがって関わってくれば有利になります。またサカ自身、この1対2の状況でも相手を縦にかわして相手ゴール前の深い位置に入っていけるようになっているんです! このあたりが昨季に比べて凄みを増しているところです。 チームとしては、今までは相手を押し込んだ時に丁寧に崩そうとボールを動かすことが多かったんですけど、今季はサイドの高い位置に行った時にはシンプルにクロスを入れているように感じます。これはゴール前に高い選手がいないといけないんですが、今季はハヴァーツがこのボックス(ペナルティーエリア)内の空中戦を制しているので、彼の存在は大きいですね。 あとはボールとは逆サイドのウイングが、ポケット(ペナルティーエリア内の両サイドのスペース)に斜めに入っていく攻撃も、すごく意識的に取り組んでいるようですし、最終ラインの裏へのアタックも常に狙っています。
【プレスも相手によって使い分け】 守備は昨季からそうですけど、やっぱりハイプレスのクオリティがアーセナルは本当に高いですね。 相手が4-3-3の時のハイプレスの仕組みを説明します。今季特徴的なのが、前線のハヴァーツとトロサールが、相手のふたりのCBを捕まえに行くところ。そうなると中盤がライスとトーマスのふたりに対して相手が3人になり、アンカーが空いてくるんですが、ここはライスが捕まえに行きます。すると後ろが1対2の状況になりますが、ここがやはりライスのよさというか、ひとりで2人を見られるんです。 アンカーに行って後ろに通されたとしても、すぐに戻れるだけの機動力があります。また前に行った時は何度インターセプトしたことか。ここの守備能力が本当に高いですね。 また、相手をサイドに追い込んだ時、空きやすい逆サイドのインサイドハーフは、マルティネッリなど逆サイドのウイングが捕まえる形。相手のインサイドハーフが高い位置をとった時はCBが出てきて捕まえるなど、このあたりもすごく整理されています。 こうなると基本的にはほぼマンツーマンの形なんですが、これによって相手はマークのズレを作りにくく、ビルドアップの際にボールの出口を探しづらくなっています。 もうひとつのプレッシングのスタイルとしては、ハヴァーツがアンカーへのパスコースを見て、トロサールが相手右CBへ。左のCBにはサカが外側へのパスコースを切りながらプレッシャーをかける形もあります。もし、外側の相手(左SB)にパスが出た時には、右SBが縦にスライドして捕まえに行く。こうしてプレスのかけ方も相手によって結構使い分けています。