前島亜美と音楽 デビューアルバム「Determination」に込めた想い
■「まだ先があるんだ」と未来が見えた
――少し抽象的な質問になりますが、前島さんにとって“音楽”とは? 前島:私にとって音楽は、ずっと“華”のような存在なんです。グループとしてデビューした頃、先輩方のライブを見学する機会がたくさんありました。そのときに感じた、音楽が持つ圧倒的なパワーと華やかさは、今でも鮮明に心に残っています。 その後、私は一度音楽から離れ、演劇の世界に飛び込みました。とくに私が魅了されたのは、歌わずに言葉だけで物語を紡ぐストレートプレイという演劇で、言葉とシンプルな演出で舞台を緻密に作り上げていくその繊細さに惹かれていたんです。 そうして役者に専念してきた数年間を経て改めて感じたのは、音楽には“一瞬で人の心を掴む力”があるということ。音楽が持つパワーは、観客全員が一つのエネルギーを共有している感覚を生み出し、その力は舞台演劇とはまた異なる、圧倒的な引力を持っているのだと感じています。 ――たしかに。舞台演劇は幕開けから徐々に感情が高まっていくのに対して、音楽ライブでは、最初の曲から観客のボルテージが一気に最高潮に達することもありますよね。一方で、役者として培った経験が音楽活動で活かせる場面も多いのでは? 前島:それは感じますね。グランドミュージカルのオーディションをたくさん受けていた時期には、声楽的な歌のレッスンを受けていて、ポップスとは全く異なる、響きに特化した歌い方を学んでいました。でも、そのときはJ-POPやアニソンのレコーディングにどう活かせるのかが見えなくて、うまく繋がらないなと思っていたんです。 ただ、最近になって人体的に楽で綺麗な音の出し方という点で、クラシック的な要素や声楽で学んだことが今の音楽活動に繋がり、1つのものになってきた感覚があります。とくに、ミュージカルで学んだ「話すように歌う」という劇団四季や宝塚の先輩方の技術に憧れて練習していたことが、時折活かせる瞬間があって。また、歌詞を読み解く過程も台本を読む力に似ていて、結局、すべてが繋がるんだなと実感しています。 ――今後の音楽活動における目標はありますか? 前島:何よりも「歌がうまくなりたい」という気持ちが強いですね。これまでも長い期間、いろんな先生方に歌を教わってきたのですが、ある時期には「これ以上は成長できないのかな?」と、自分の限界を感じたこともあったんです。 ですが、アーティストデビューが決まってからは、毎週レッスンを受けながら自分でも音楽を勉強しつつ、家でもずっと歌い続けていたんです。そうしてもう9ヵ月ほど経ったんですけど、少しずつ上達を実感できるようになってきて。本当に小さな一歩なのですが、自分の体の中で響く音が確実に変わってきているのを感じますし、それがレコーディングでマイクを通してディレクターさんにも伝わっていると言われたとき、「まだ先があるんだ」と未来が見えた気がしてすごく嬉しかったです。 だから、もっともっと頑張りたいし、アーティストとしてさらに成長するために、今後も歌を磨いていきたいと思っています。 ――素敵ですね。最近私も考えているのですが、「歌がうまい」とか「歌が上達する」って具体的にはどういうことなのかなと。 前島:そうですね。そもそも「うまい」って何を指すのか、という部分もあると思うんですけど、たとえば、今私が指導を受けている先生は、人体の構造に基づいてすごく論理的に教えてくださるので、とてもわかりやすいんです。ただ気合いや気持ちだけではなくて、「声帯がこうなっているから、こうなるんです」と説明していただけると、自分でも予想していなかったコツを掴む瞬間があったりして。 ――プロならではの視点ですね。 前島:そうなんです。来年のライブまでにどれだけ成長できるかが、今の頑張りどころだなと思っています。