【数学五輪・金メダリスト&脳科学者・茂木健一郎さんが提言】子どもの脳には「遊ぶこと」が大切です!|STORY
「長期休暇も忙しくてどこへも行けそうにない……」、編集部で実施したアンケートでは、そんな声が多々。でも、実は「脳を育てるのに“遊び”こそが大事!」と、脳科学者たちは提言しています。暑すぎた夏、なかなか外で長時間遊べないという家庭も多かったのでは。この秋こそ、外で脳を育てるのに良いタイミングです。
フロー体験が、「学び」を楽しく感じる原点
◇ 「学ぶ」と「遊ぶ」は対義語ではなく、 実は、深く繫がっている! 小学校5年生~中学2年生の思春期の子を持つ読者50名へアンケートを実施。約半数の子どもが普段から外遊びをしておらず、夏休みは「受験準備で遊ぶ予定はナシ」という家庭が約4分の1という結果に。 茂木さん(以下敬称略) 今の子どもたちは、どうやら外遊びをあまりしないらしいね。僕が子どもの頃は、日が暮れるまで神社の境内で蝶を追いかけてた。 中島さん(以下敬称略) 私も平気で2時間延々と川を眺めているような子どもでした。あとは、砂場で延々と遊んでいたり……(笑)。 茂木 砂場といえば、最先端のAIの技術開発をサンドボックスっていうんだよ。まさに、砂場遊びみたいな感じで人々が開発していくから。 中島 確かに、自然の中で遊んでいる感覚って、勉強するのとすごく似ている感じがします。風が吹いてきたり、木々の音を感じたり、虫を見つけたり……。自然の中では色々な情報が入ってくる。勉強もそうで、だから勉強も好きだった。 茂木 最近、自分が教鞭をとる大学で「何かに夢中になるような、フロー体験をしたことがない」と学生が話すのを聞いて驚いた。幼少期から塾や習い事で忙しくて、時間を忘れ、我を忘れて遊ぶ「フロー」状態を実感する機会がないのかもしれないな。 中島 遊びと学びって、対立せず繫がっているのに、もったいないですね。 茂木 実は、世界で輝いている人って、遊びを知る人が多い。中島さんの師匠・数学研究者の権威、ピーター・フランクル氏もそうだよね。数学の権威でありながら、大道芸をして世界を回ってる。 中島 いつも、派手な衣装で皆を楽しませてもくれます(笑)。遊びを知る人は、一つの軸だけじゃなく、多様性がありますよね。考えが凝り固まってなくて、揺らぎがあって。そう、クラゲみたいに。来年の大阪・関西万博でプロデュースを任されたパビリオンを、“揺らぎある遊びが大事”というところから「クラゲ館」と名付けたんです。 茂木 そういえば、ブルース・リーの有名な言葉、「Be Water」水になれ! ってまさにそうだよね。予想できないことが起きたとしても状況に合わせて柔軟に変化するって、これからの時代はすごく大事。そういう意味では、遊んでいる子こそ、水になれる! 中島 私が数学研究者として今気になるのは、日本の理数教育は世界的にもトップレベルであるにもかかわらず、「楽しい」と答える子が少なくて、中学生になると、その数がさらに減少してしまうことなんです。 茂木 「勉強しなさい」と無理やり情報を与えられて、子どもたちは楽しいと感じるどころか、下手するとフォアグラみたいになっているのかもしれないね。僕が日本で一番問題だと感じているのは、子どもたちの自己肯定感の低下。最近の塾は偏差値でのランク付けはもちろん、成績で席次が決まるらしくて……。 中島 私も子どもの頃、少し塾に在籍したのですが、成績順に並ばされる「席次」がイヤで試験以外は殆ど行かずに終わりました。 茂木 遊びって、順位をつけないから自己肯定感も下がらない。席もみんなで楽しく適当な位置に座るでしょ。それに、自分はコレが得意でコレが苦手、なんていうことも遊びの中から見つけられる。僕は、蝶を追いかけたあと、野球をやったけど、どんなに練習してもモノにならなくて……。書道もからっきしだし、絵も下手くそ(笑)。 中島 私は、テニスに憧れたのに練習してもダメで、どうやら運動神経が鈍いようで、自転車も上手く曲がれない(笑)。 茂木 そんな得意、不得意っていう脳の個性は、遊ばないと見えてこないんだよね。 中島 遊びの失敗の中から見えてくることも山ほどありますよね。勉強以上にその学びは大きい。国際数学オリンピックでも、試行錯誤しながらずっと失敗して……。少しずつ正解が見えるのが楽しいし、できないから楽しいこともあるな、と。 茂木 数学オリンピックの優勝者が言うと、説得力ある(笑)! それに、子どもの頃に遊んでいた人ほどピークが長く続くよね。ほら、僕は著書が今、ドイツで15週も1位をキープしているし、中島さんは来年の大阪・関西万博のプロデューサーだし! 人生100年時代、僕たちのピークもまだまだこれからだよね(笑)!