ライブ配信に2000回以上「荒らし」連投、にじさんじ所属「ライバー」を活動休止に追い込んだ匿名投稿者の半生と後悔
●今でも動画配信の視聴は「生きがい」でやめられない
今も「生きがい」だという動画配信者のライブ配信への投稿や、Xへの投稿は続けているが、自分を信じきれない。 眠る前は、PCの電源を落として、ネットやSNSの投稿では「Enterを押す前に一呼吸おいて立ち止まる。書いている途中の内容を消すことも一度や二度ではなくなった」 病気や障害などを理由に仕事につけず、家族や知人との縁も薄弱で、犯罪を起こすことを躊躇せず、法的責任を追及されても、金銭的補償に応じない。人生に行き詰まった人たちは総じて「無敵の人」というネットスラングで呼ばれることがある。 経済的には「無敵の人」と呼ばれる存在に近い佐藤さんに、彼らをどう捉えればよいのか聞いた。 「罪の意識もなく、悪意ある行動を繰り返して、完全に無敵の人になった人には、解決策を示せない。 程度の低い結論だが、罪を犯した人は裁かれて然るべき。何もできないならせめて、できる限りの誠意を見せるべき」 誹謗中傷の加害者を生み出す背景には、個人的な問題ではなく、社会の問題もあるのではないか、と佐藤さんに尋ねてみた。 「私に限れば、自分の状況の悪さは生まれの問題であり、社会に感謝こそすれ、社会に対する不平不満はない。社会から『明日死んでね』と言われたら、ハイと言う」 「死にたくない」と言っていた先ほどの言葉とは矛盾するが、佐藤さんはそう語った。 「やってしまった側の人間の自分から言えることは、誰にでも『善の部分』が少なからずあるはず。自分の中にあった大切なものを大切にしていけば、今より生きやすい世の中になるかと」
●誹謗中傷に対抗する仕組みが作られていく
どん底から救ってくれたのも、人を傷つけたのもインターネット。匿名の書き込みの先には、ネガティブな感情を誹謗中傷の形で人にぶつける人がいた。 佐藤さんは生活保護や障害者年金を受け取って生活している。誹謗中傷をなくそうとしたとき、「社会に不平不満はない」と言っていた彼のような人間を支える社会を目指すことも長期的な視野からすれば効果があるのではないか。 だからといって、今苦しんでいる被害者が誹謗中傷に振り回され続けなければいけない理由はない。これまで泣き寝入りをしていた被害者たちは、悪質な誹謗中傷に対して続々と立ち上がっている。 総務省が運営を委託する「違法・有害情報相談センター」への相談件数は、2022年度は5745件となり、8年連続で5000件を超えて高止まりの傾向を示している。 総務省は3月、プロバイダ責任制限法の改正案を閣議決定した。悪質な投稿の迅速な削除対応をプラットフォームに義務付けるもので、スピーディーな被害救済を図る。 同社の誹謗中傷行為を対策するチームには、1カ月に約1500件もの誹謗中傷の情報が寄せられ、投稿に向き合い続けているという。
弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎