ライブ配信に2000回以上「荒らし」連投、にじさんじ所属「ライバー」を活動休止に追い込んだ匿名投稿者の半生と後悔
●「これは自分のやったことじゃない」信仰心を捨てた男性がすがった「神頼み」
それからおよそ1年の間に、プロバイダからの照会や、同社からの「損害賠償請求訴訟の予告通知」が届いた。 「自分には賠償を請求されても支払い能力がありません。謝罪させて下さい」。2023年11月、同社宛にそうメールしたという。 ライバーの活動休止や卒業はプレスリリースも出され、話題になった。謝罪するタイミングはそれまでにも十分にあったわけだ。 「リリースは当日に見たが、何をどうしてよいのかわからなかった。謝罪しても受け入れてもらえるわけがない。金銭的な補償もできないし、沙汰を待つ以外に方法がなかった。 SNSの反応も目にするのが怖くて、見れば怖くて死ぬしかないと思い、見れなかった。 活動休止は別の何かが原因で、自分の荒らしが原因ではないと、神頼みに近いことを考えていた。裁判だけはいやだ。今度こそ死ぬしかなくなる。でもいやだ」 現実逃避と逡巡を繰り返しながらも、「訴訟」の2文字を見て現実だと認識した。 その後、数カ月間にわたり同社と交渉し、同社の提示した条件を受け入れることで示談が成立した。
●誹謗中傷のニュースを見て考えることは
誹謗中傷は人を傷つけ、仕事を奪ったり、表現活動を妨げたりもする。亡くなる人もいる。 佐藤さんもそうしたニュースを見聞きすると、被害者だけでなく加害者にも思いを馳せるようだ。 「私は自分が過去、家族にされてきたことよりも一生をもっても償えないことをした。 誹謗中傷や罵詈雑言は被害者側に原因があるわけはない。加害者側が悪いと声を大にして言いたい。 私みたいに心に余裕のない人の吐け口であるかもしれないし、物事を重く捉えることのできない子どもによるものかもしれない。 誹謗中傷の報道をニュースで見るたび、加害者の中には無職の人や私よりひどいと思われる状況にある人も見受けられる。そうだとしても、それは言い訳にならないし、誹謗中傷をする前に立ち止まることができると思う。自分の辛さに他人を巻き込むのは何よりやっちゃいけない。 私は立ち止まることができなかったが、もう二度と同じことをやってはなるものかと覚悟している」 誹謗中傷の加害者は民事・刑事で法的責任を問われる。法改正によって、厳罰化も進んでいる状況だ。 「同じことをやれば、次は間違いなく罪に問われることも理解している」