【独占速報】ヤマハXSR900GP試乗「デザインも走りも、バイクが最高にアツかった80年代を思い出す!」
過激すぎない、スポーツバイクとしてちょうどいいバランス
初めてXSR900GPにまたがると、少し奇妙な感覚に陥る。ノスタルジーの波が押し寄せ、レイニーやローソン、ニール・マッケンジー(今回の試乗会に一緒に参加していた)に関する思い出が押し寄せてくるのだ。しかしその後、乗り手を迎えるのは完全に現代的な5インチのTFTディスプレイと、クルーズコントロールも標準装備したスイッチボックスだ。この装備はベースのXSR900から引き継がれたものではなく、最新型のMT-09と同様の新設計パーツだ。スイッチボックスにはメニュー選択などに使うジョイスティックやシーソータイプのウインカースイッチが備わっている。 ライディングモードはスポーツ、ストリート、レインの3つに加えて、2パターンのカスタマイズ枠を用意。4段階のパワーデリバリーモード(PWR)、3段階のトラクションコントロールシステム(TCS)、3段階のスライドコントロールシステム(SCS)、3段階のリフトコントロールシステム(LIF)、コーナリングアシスト機能のオン/オフが選べるブレーキコントロール(BC)、2つの設定を備えた機能オフも可能なクイックシフター(QS)、および常時機能するバックスリップレギュレーター(BSR)が備わっている。いずれも6軸IMUにリンクされた、リーンセンシティブなものである。 これらの機能の設定は複雑に思えるかもしれないが、実際はそれほど難解ではない。私は今回の試乗で90年代のGPスタイルに近い垂直ウイリーをしたいという明確な意志があったため、リフトコントロールシステムを解除したうえでスポーツモード、もしくはストリートモードを選択した。非常に珍しいことに、XSR900GPはリフトコントロールシステムを完全にオフにするとレインモードも含めて全てのモードで一括で解除され、主電源を一旦落としてから再度点けても解除された状態が保たれる(多くのバイクでは自動でオンの状態に戻される)。 説明会場のホテルから出発し、ポルトガルの海岸沿いのルートに入ると、XSR900GPがXSR900よりも先鋭的であることがすぐに分かった。荷重バランスがかなり前方寄りになっているためである。ただ、確かにXSR900よりもさらにスポーティなスタンスではあるが、バランスが良く、日常のライディングを意識していることも感じられる。 ヤマハによると、トップブリッジの上にマウントされたセパレートハンドルのグリップ位置はYZF-R7よりも高く、YZF-R6やFZR400RR SPほど過激なポジションではないという。ただし、身長170cmの私にとっては、835mmのシート高は標準的なバイクに比べて高いと感じた。なお、2段階の位置調整が可能なフットペグは、試乗車では高い方の位置に設定されていた。 編集部註:日本仕様の標準設定は低い方の位置。 法定速度で走行した公道区間では、アグレッシブなスポーツモードよりもストリートモードのソフトでスムーズなスロットルレスポンスがマッチした。ヤマハはスポーツモードのスロットルレスポンスを少し刺激的にしすぎる傾向があるように思う。実のところ、後にサーキットで試乗したときも、私は依然としてストリートモードを好んで選択した。 エストリル・サーキットに向かう途中、人里離れた場所に差し掛かったのでエンジンを「歌わせる」ことができた。ヤマハ第3世代のクイックシフターはスムーズかつ楽に、レーシングマシンと同じようにサクッとセットアップできるため、激しく加速するときに素早いギヤチェンジが可能だ。 ユーロ5+準拠の「CP3」インライントリプルエンジンは120馬力/1万回転、9.5kgf・m/7000回転を発生し、このタイプのバイクとしては公道におけるバランスは完璧であるように感じられる。 XSR900GPの中回転域のトルクカーブは瞬間的なレスポンスを提供し、それは強力かつ迅速だ。また、スポーティなスクリーンの後ろに屈んで、80年代~90年代に戻ったかのようにタンクに顎をつき、回転数が上がりパワーがあふれ出るまでギヤをホールドしていると、ちょっと奇妙な形状のマフラーからの排気音はやや押し殺されているものの、エアボックスから聞こえてくる美しい吸気音は生き生きとした咆哮のようであり、個性を十分に感じさせてくれた。 さて、ワインディングを堪能した後は、サーキットでその走行性能を100%引き出してみたわけだが、それは改めて詳細にレポートしたい。 レポート●Adam Child 写真●ヤマハ/Ant Productions/岡 拓 まとめ●林 康平