【9月に読みたい3冊】今月のGINZA編集部レコメンド
GINZA編集部が、新刊3冊をレビュー!今月何を読もうか迷ったら、こんな本はいかがでしょう?
『たぶん私たち一生最強』小林早代子
花乃子、百合子、澪、亜希は、会えばいつも賑やかに盛り上がる高校時代からの友人同士。花乃子が口にした「4人で一緒に暮らす人生もあり?」の一言をきっかけにルームシェアを始めるが、恋愛・結婚・出産という「誰もが認める普通の幸福」に憧れる気持ちも捨て切れない。女子の友情、エンパワメント、シスターフッドの物語という紋切り型のタグからはみ出すところが大きな魅力。読者を軽く突き放すようなラストもすばらしい。
『わたしたちの担うもの』アマンダ・ゴーマン
全米で100万部のベストセラーとなった20代の詩人による第一詩集。黒いマスクのイラスト上に白字で印刷されたもの、魚の形に組まれた文字、日記帳を模したページ。個人と世界を往来することで生まれる言葉はヴィジュアル的にも大胆で果てしなく自由。ゴーマンの詳細なプロフィールに加え、彼女が得意とするアリタレーション(頭韻)や通底するモチーフなど、訳者による解説も読みごたえがある。
『なめらかな人』百瀬 文
《必ずしも恋愛にもとづかない関係をときどき家族と名乗ることができたりする社会になったらいいのにな》─アーティストの男性二人とともに生活し、かつ恋人もいる美術家の著者。葛藤を経て得た暮らしの現在地、幼少期の思い出、作品をめぐる記憶や思考の中に身心の連携のままならなさが絶妙な表現で混ざりこむ。「弱い自分」を明かす文章からにじむ他者の優しさが温かい。静かな衝撃を与えてくれるエッセイ。 ―――――――― Recommender_北村浩子 今月心に残った文。《批判してやりたい、という欲求。そこにはおそらく個の実存に関わる何かが横たわっているのだろうと思う》(『なめらかな人』より) ――――――――
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