Brexitの次に注目すべきは米利上げ 判断材料の雇用統計をどう見る?
現在、世界経済とマーケットを一番賑わせている話題は、“Brexit(ブレグジット)”ですが、次に気になるのは、米国の利上げがいつ行われるのかです。その判断材料の一つとして用いられるのが雇用統計です。失業率がどうなったかを数値のみで判断する際に気をつける点やほかにも注目すべき統計などについて、第一生命経済研究所・主任エコノミストの藤代宏一さんが解説します。
FRBの利上げの判断材料となる雇用統計
英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票で、いわゆる“Brexit”が現実のものとなりました。この結果を受けてポンドが急落し、リスクオフの流れから世界的に株価が大幅下落するなど、影響は多岐にわたっています。USD/JPYも一時100を割れるなど日本も大きな影響を受けましたが、今回の結果は英国のみならず、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ計画にも大きな影響を及ぼしたと思われます。6月24日のBrexitを受けて、金融市場が織り込むFRBの利上げ確率は、7・9月連邦公開市場委員会(FOMC)がゼロ%に低下し、年内での利上げすらほとんど織り込まれていない状況になりました(6月28日時点)。これはFRBにとっても予想外の結果だったことでしょう。 もっとも、Brexitに対する金融市場の初期反応が一巡し、米国経済の強さに市場参加者の注目が戻れば、FRBの利上げが再び意識される可能性もあります。その米国経済の強さを推し量るうえで重要となるのが雇用統計です。そこで7月8日に発表される6月雇用統計の予習をかねて、直近の雇用統計についておさらいをしていきましょう。
素直には喜べない、失業率低下の要因とは?
6月3日に発表された5月雇用統計は非農業部門雇用者数が+3.8万人と市場予想の+16.0万人を大きく下回るネガティブ・サプライズとなりました。一方で失業率が4.7%へと低下したため、一見すると労働市場の改善が進んだようにもみえますが、これは職探しをあきらめた人が増加したことに起因するものであり、雇用の強さを示すものではありませんでした。 職探しをあきらめた人(労働市場から退出した人)は、失業率の分子(失業者数)・分母(職を持つ人・職探しをしている人の合計、これを労働力人口という)のどちらにも計上されないため、その増加は失業率を下押しします。たとえば労働力人口1万人のうち失業者数が500人のとき、失業率は5%となります。ここで、失業者のうち100人が職探しを諦めたとすると、失業率は4%(400/9900=4.04%)に低下します。これが職探しをあきらめた人の増加が失業率の低下につながるカラクリです。これと似たようなことが起きたのが、5月雇用統計でした。