夢より現実?なぜプロ野球若手は引退後に「高校野球監督」でなく「一般就職」を希望するのか?
2013年から元プロ野球選手の研修によるアマチュア資格回復が認められるようになり元プロ野球選手の監督、コーチが増加の傾向にはあるが、コーチの場合、嘱託の学校職員のような不安定な立場のケースが少なくない。OB会が援助してのアルバイト扱いのコーチもいる。 基本的に「母校に帰って教える」というパターンになるため、研修を受けて、アマチュア資格を回復させても、受け入れ先が限られる。また、今後、少子化、野球人口の減少などの流れもあり、ますます「高校野球指導者」というセカンドキャリアへの道は狭き門となるだろう。今回のアンケート結果は、若手選手が、夢よりも現実を直視している結果だったのかもしれない。 川口さんは幅広いネットワークを生かし、就職後の元プロ野球選手とも密に連絡をとっているが、現在、高校野球の監督を務めている某元プロ野球選手は、給与面の不満に加え、教員ではないのに教育面までを行わねばならない過酷な現場へのストレスを吐露したという。 「一般就職の方は相変わらず生命保険系に進む人が多いのですが、希望者が増えた理由として、先輩からの口コミやメディアなどで成功例を目にする機会が増えたことも影響していると思います。実際、人事部の人たちと話をしていても元プロ野球選手という人材を求める企業も業種も増えています。また選手の側も、これまでは辞めた後のことなど何もしらない、と、保険や年金を含めた給与システムにさえ無知な選手が多かったのですが、今はいろんな情報が手に入るので、将来に対する意識に変化が見られます」 川口さんは15日に企業と元プロ野球選手らをマッチングさせる就職セミナーを開催するが、企業側は11社が参加予定で、今秋のトライアウトを受験したものの、次の行き先が決まっていない戦力外の選手も複数名参加するという。 今後「高校野球監督」を含めた野球の世界での仕事を続けたいというセカンドキャリアへの願望が、現実路線へと変わり「一般就職」へとシフトしていくにしても、まだ「売り手市場」にまでは至っていない。 前述した昨年度の元プロ野球選手のセカンドキャリアの追跡調査によると、一般就職したのは18人で、自営、起業を含めて全体の16%。前年の12%よりは、増えているが、ここ5年は12%から19%の間で推移していて飛躍的に一般就職が増えているわけではない。