名門が高校生に負けた…屈辱乗り越えSVリーグ元年へ 23歳「陽キャ」リベロが復権の救世主に
■スローガンは「繫(つなぐ)」
バレーボールSVリーグ女子の東レアローズ滋賀(大津市)が「繫(つなぐ)」を新スローガンに掲げ、10月開幕の2024~25年シーズンに臨む。多くのスターや日本代表を生み、毎年のように優勝争いを演じながら、昨季23~24年シーズンは主力が抜けた影響もあり8位と低迷した。苦戦が続く中、年明けに九州共立大から内定選手として加わったリベロの松岡芽生(23)が躍動感あふれるプレーで救世主となった。真価が問われる新リーグ元年、背番号を「19」から「5」に変更し、新たな決意とともにコートに立つ。 ■「陽キャ」リベロの笑顔ショット【写真】 1カ月後に迫った開幕が待ち遠しい。「正直なところ、不安よりも楽しみな気持ちの方が強いです」。トレードマークの笑顔で松岡が言い切った。理由は二つある。一つは多くの新戦力が加わった新体制で臨むシーズンであること。「スローガンに凝縮されているのですが、受け継がれてきた伝統もそうですし、選手同士、監督さん、スタッフ、ファンの方々…東レアローズに携わる皆さんとのつながりを大切にしたい」 もう一つは、自身の今夏の取り組みに対する「答え合わせ」ができることだ。内定選手の立場だった23~24年シーズンはVリーグ1部(V1)のレギュラーラウンドを経験した。11試合(28セット)に出場し、69・0%のサーブレシーブ成功率をマーク。先輩リベロで、前キャプテンの中島未来(26)とともに守備を支えた。「リーグはプレーヤーとしての『評価』を一番いただける貴重な機会だと思っています。周囲に『うまくなったね』と言っていただけたら、それだけ成長しているかなって」。仮に厳しい声が耳に届いても「それはそれで、まだまだ力が足りないという証し」と、正面から真摯(しんし)に受け止める覚悟だ。 ■黒鷲旗で3戦全敗 5月の黒鷲旗全日本男女選抜大会では筑波大や下北沢成徳高(東京)に敗れるなど3戦全敗。屈辱を味わった。「勝ちたい気持ちをどれだけ表現して実行できるか」。大会後に声を絞り出した松岡が夏場の練習で集中して取り組んだのはレシーブとトスだった。特にサーブレシーブはボールの勢いを吸収しやすいように体の近くでキャッチしていたのを、新任の岡本陽(はる)コーチ(27)の助言で、従来よりも前方でさばくように修正。「ボールをうまく逃がせる感覚を徐々につかんでいます」と手ごたえを感じ取っている。 バックゾーンからのトスはアンダーハンドに加えて、オーバーハンドも取り入れた。「アンダーだと相手に(守るための)時間をつくらせてしまいますし、予測もつきやすくなりますから」。アンダーに比べてオーバーは早くボールに触れるため、アタッカーへの配球の精度が高まれば、速い攻撃が可能。変化を恐れない松岡の姿に「勝ちたい気持ち」が表れていた。 変化といえば、背番号も「19」から「5」になった。「誕生月の5月の英語表記がMay(メイ)で名前も芽生(めい)なので」と説明。最近、実家の福岡で暮らす母に名前の由来を聞く機会があった。「この世に新しい命が芽生えて、その命を大切に生きてほしいから」との願いが込められた家族の深い愛情にあらためて感謝し、名に恥じない生き方をしようと誓った。 ■背番号「19」→「5」に ふとした瞬間の写真をスマートフォンで撮影するのが癒やしの時間だという。「琵琶湖の風景や沈む夕日、雪景色とか…。飛行機雲や月も好きです。そうそう、この前はお母さんから実家近くの『ヒマワリ畑』の写真が送られてきたんですよ。やばいくらい可愛かったです」。サービス精神旺盛でエネルギッシュな言動から「陽キャ」のイメージが定着しつつある一方で、ロマンチストの一面も持ち合わせている。「今シーズンは誰よりもフレッシュに頑張ります!」。新しい風を吹かせながら、ボールと想(おも)いをつないでいく23歳。心のシャッターで何度でも、そして何よりも収めたいのは勝利の瞬間に他ならない。(西口憲一) ◆松岡芽生(まつおか・めい) 2001年5月22日生まれ。福岡県嘉麻市出身。ポジションはリベロ。大隈小1年から「嘉穂ジュニア」でバレーボールを始める。福岡市の博多女子中ではセッター。誠英高(山口)からリベロで、3年時の全日本高校選手権(春高バレー)は、荒木彩花(現SAGA久光スプリングス)や室岡莉乃(現Astemoリヴァーレ茨城)を擁して優勝した東九州龍谷高(大分)に準々決勝で敗れた。北九州市の九州共立大に進み、キャプテンを務めた4年時は九州大学リーグ(1部)で春準優勝、秋3位。大学最後の大会となった23年12月の天皇杯・皇后杯全日本選手権は初戦でアランマーレ山形に敗れた。大会後に東レアローズ(現東レアローズ滋賀)への入団内定が発表された。身長165センチ。背番号5。 【#OTTOバレー情報】
西日本新聞社