世界最先端フェス「C2C」に学ぶ 文化的価値と持続性の両立、音楽と都市の未来
音楽フェスはローカルコミュニティのためにあるべき
―Stone Islandとのイベントシリーズは既にヨーロッパの多くの都市で世界展開されています。 セルジオ:Stone Islandとのパートナーシップ以外にも、ロンドンやベルリン、イスタンブールといった場所でイベントやフェスを開催してきた。当時のイスタンブールには、それほど大きな音楽フェス・シーンはなかったけど素晴らしいプロジェクトができたと思っているよ。 ただ、音楽フェスをフランチャイズ化することについては一切考えていないんだ。ローカルの人びとがその都市のコンテクストに沿ってプロジェクトを作り上げることに意味があると思うし、このようなイベントのつくり方をすることで、僕たちがトリノでイベントをつくる上でも大きなインスピレーションを得ることができる。日本でもいつかイベントを開催することができたらいいね。僕は日本文化の大ファンだし、日本文化からも大きな影響を受けた。例えば、今年のフェスのテーマである「LIVING WITH THE GODS」のコンセプトビデオは、宮崎駿監督の作品から影響を受けている。 実はこれまでにもフェスを日本で開催しようとしたことがあったんだけど、色々あってうまくいかなかったんだ。でも、東京の素晴らしいプロモーターたちを知っているし、いつか実現できたらと思っているよ。日本は自分にとって世界一好きな国と言っても過言ではないんだ。 ―ぜひ来てください! 最後に、音楽フェスと都市の未来について聞かせてください。音楽フェスも都市文化の作り手の一人と考えると、フェスの未来と都市の未来は切り離せない関係性だと思います。あなたの視点から、都市の未来は今後どのように作られていくべきかという点について聞いてもいいですか? 音楽フェスは都市の文化にどのように影響を与えることができるのでしょう? セルジオ:とてもいい質問だね。僕が音楽フェスのフランチャイズ化を理解できない理由は君が言ってくれたことに近い。音楽フェスはローカルコミュニティのためにあるべきなんだ。もし、僕が日本でフェスをやることになったら、それは完全にローカルの文化やコンテクストに沿ったものになる。僕たちにできることと言えば、自分たちの経験を還元していくことくらいだろうしね。そういった意味では、 Live Nationのような巨大プレイヤーがやっていることは僕たちがやっていることとは異なると言えるだろう。 音楽フェスは街で開催されているお祭りであるだけでなく、都市の文化や政治に対して影響を与えることができる重要なプレーヤーであるということを理解しなければならない。そして、都市に新しい文化を創造するには、アーティストが必要なんだ。音楽フェスのプロモーターである僕にとって最も重要な仕事のひとつは、フェスに訪れるオーディエンスとアーティストを惹きつけること。そして、人びとが都市のために何かユニークなものを創造する行為をサポートする必要がある。そうすれば、都市の文化を変えることができる。 ―そうですね。 セルジオ:もし未来について言えることがあるとすれば、C2Cはこれからもトリノでフェスで開催すると思う。永遠にね。そして、これからもトリノでしかできないものを作りたいと思っている。幸いなことに、トリノでは、僕たちを熱く応援してれるさまざまなコミュニティに恵まれている。「Avant-pop」というアイデアを広めるためには、アーティストやオーディエンスだけでなく、パートナーやメディア、地元の市民、行政など他のステークホルダーの存在が不可欠だから、これはとても大きなことだよ。 そして、僕たち自身もローカルコミュニティやアーティストをサポートするためのフェスとして、トリノにおける若手アーティストに関する政策や都市の国際的な位置づけについてとても注意を払っている。この2つの要素がうまく組み合わさらないと、世界中からアーティストを惹きつけることはできないからね。実際にトリノ市の政策のうちのいくつかは、僕たちの都市に対する考え方に大きな影響を受けているんだ。より多くのオーディエンスがフェスに来て、アーティストがトリノに目を向け、実際にこの場所に移り住み、何か新しいことを作り出していくための流れを生み出していくことが、将来的には都市にとって意味のあることになると思う。音楽フェスは、都市の文化や政治を変えるパワーをもつ。だからこそ、都市と人びとのための環境作りに貢献することは、僕たちの責任でもあるんだ。 --- C2C FESTIVAL 2024年10月31日~11月3日 伊・Lingotto Fiere
Kei Harada