ハンターカブで高速道路走行! CT125ハンターカブ×サイドカー試乗レポート
「ハンターカブで高速を走る」なんて夢物語を現実にするのが、サイドカー化! オートスタッフ末広から販売されているCT125ハンターカブのサイドカー「Uedi(ウェディ)」に試乗した模様をお伝えする。記事で使用したCT125ハンターカブは、2023年モデルだが、2022年モデル以降であればサイドカー化可能だぞ。 【画像】CT125ハンターカブ×サイドカー試乗レポート[高速道路走行] ────────── 【ドライバー:谷田貝洋暁】 本誌ハンターカブ実験担当として渡河性能実験に続き、今回のサイドカーでの高速道路走行実験にも抜擢されたフリーライター。無理/無茶/無謀の3ない運動の旗手。 ────────── 【パッセンジャー:難波祐香】 ご存知、バイク声優のにゃんばちゃん。じつはサイドカーレースのパッセンジャー経験者でこの企画の適任者であるが、そんな経歴を我々が把握したのはロケ当日だ。 ──────────
100万円ちょっとで憧れのサイドカーの世界へ!
「それ、ナンシーシー!?」。予想通りというかなんというか、高速道路の料金所でETCカードを手渡したところでおっちゃんに待ったをかけられた。 「125ccです! が、側車付きです」と、あらかじめ用意していた回答を間髪入れず投げ返す。おっちゃんが疑問に思うのは、当たり前。なんせ僕が跨っているのはCT125ハンターカブ。つまりは125ccで原付二種クラスなのだ。 本来なら高速道路に入っちゃダメなバイクなのは、いわずもがな。ところが不思議なものでサイドカー、正式には「側車付き二輪」となると話は別だ。このあたりはとても複雑なのだが、かいつまんで説明したい。 オートスタッフ末広から販売されているウェディは、サイドカーなので免許的にはバイク扱い。つまり、運転には二輪免許が必要になる。ただハンターカブはそもそも125ccでクラッチ操作もないので、このウェディはAT小型限定普通二輪免許で運転可能となっている。 また車両区分に関しては、「側車付き二輪」で高速道路上の区分は「軽自動車」。ウェディの場合、「軽二輪」登録でナンバーは白となる。 …というわけで高速走行は問題ないハズなのだ。ところが、よほどのレアケースなのだろう、おっちゃんは事務所のスタッフの判断を仰いでいる。「ナンバー何色?」と聞かれ、「白ですね!」と答えたところで、「だったらOK!」とゴーサインが出た(※)。 ※取材後に改めてネクスコ東日本に問い合わせた結果「書類上“側車付きオートバイ”で、高速自動車国道の最低速度・50km/hを下回らなければ、排気量が125cc未満でも通行可能です」という回答を得た もののついでにウェディではなく、CT125ハンターカブでの高速走行のインプレを書いてしまうと、「車体に関しては思った通り意外といける」というのが正直な感想だった。125ccのエンジンに由来する加速/トップスピードに関しては、70km/hという感じでいかんともしがたいものの、車体に不安なところはない。 側車付きという特殊な条件下であるものの、エンジンさえ大きくなれば、ハンターカブは十分に高速走行可能な車体であることが僕の中で確認できた。 さて、ここからはウェディの話である。この車両は多様なカスタムを得意とするバイクショップ・オートスタッフ末広が7月から販売を開始するサイドカーだが、同店も高速走行は推奨していない。 この実験は「法律上、問題ないならハンターカブ(サイドカー付きの)で高速走ってみようぜ?」と、ちょっと悪ノリがすぎるライターの所業だ。 走ってから言うのもなんだけど、僕もオススメはしたくない。他の車両にバンバン抜かされる中で70km/hしか出せないのはちょっと心許ないのだ。高速道路でサイドカーは最高時速80km/hまでしか出せないとはいえ、やはり速度がちょっと足りない。 それに僕自身、サイドカーという乗り物に不慣れなこともある。急ブレーキはもちろん、“アクセルを急閉”で起こる挙動も正確に予測できておらず、雪道運転のような丁寧かつ神経質な操作を強いられたのだ。 また付け加えるならサイドカーの“船”という座席側は、視線が低いおかげでスピード感がものすごい。サイドカーに乗り慣れているにゃんばちゃんは笑顔で乗っているものの、僕自身が同じ立場になった時に、笑っていられるかと問われるとちょっと自信がない(笑)。 …なんて感じで邪道な高速インプレからスタートしたことで悪いイメージを与えてしまっていないか不安だ(笑)。改めて仕切り直させてもらえば、サイドカーという乗り物はとても楽しい乗り物である。 僕自身、クローズド環境で一度運転したことはあるものの、公道を走らせるのは今回が初めて。にもかかわらず、このウェディの完成度の高さはよくわかる。とにかく走りに関しては不安がないのだ。 この手のカスタム色の強いバイクに乗ると、どうも信用ならない部分があって“手心”を加えたくなるものだ。 ところがウェディ、練習がてらお店の駐車場で試走させてもらった段階からその扱いやすさに驚いた。たしかにサイドカーなりの挙動は出る。ひとりで乗れば左旋回で容易に船が浮いて片輪走行が始まるし、フロントブレーキをガン握りすれば、船の重みで右へ曲がる。 ただ、それらの挙動もとても穏やかで掴みやすい。片輪走行に至っては、「話には聞いていたけど、意外に簡単に浮くもんだねぇ…」などと余裕をかませたほどだった。 オートスタッフ末広さんによれば、このウェディ、コンパクトな車体のおかげでサイドカー特有の挙動が大型のサイドカーよりも顕著に出るらしい。車検がなくお手軽な軽二輪登録とするため車幅を1300mm以下に収め、船もハンターカブの車体に合わせてコンパクト化。 それにもかかわらず扱いやすいと感じるのは、サイドカーレースで培ってきたノウハウがあってこそだろう。でなければ「高速道路へ…」なんて気分にならなかったハズだ。 それにこのウェディは“サイドカーという乗り物はパッセンジャーとの連携操作が楽しいのだ”ということをこれでもかと教えてくれる。 パッセンジャーの体重移動ひとつで運転感覚がまったく変わるのだ。もちろんドライバーだけでのコントロールも可能なのだが、二人で息の合った操作ができるとコーナリングがバッチリ決まる感覚が味わえる。これがバイクとの一番の違いらしいが、病みつきになってしまう理由もよくわかるというものだ。 自分にはまったく関係のない世界だと思っていた、サイドカー。でもウェディなら100万円ちょっとでこの楽しさが手に入る。しかも車検のない軽二輪登録で実現してしまうというのだから、なんだかドキドキしてしまった。 【取材協力ショップ:オートスタッフ末広】電動バイク“zecoo”の生みの親であり、「こんなこといいな。できたらいいな」を形にしてくれる、知る人ぞ知る超ハイレベルカスタムショップで、現在も過給機搭載のSR400の製作を構想中。サイドカーショップとしても有名で、スタッフは’09年のレーシングスポーツカップサイドカーF4クラスのチャンピオン。ウェディ製作にもサイドカーレースのノウハウが生かされている。
────────── ●文:ヤングマシン編集部(谷田貝洋暁) ●写真:真弓悟史 ※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
ヤングマシン編集部