「イグ・ノーベル賞は最高の賞」 酔っ払ったミミズを研究 死んだ魚の実験は「やらない方がいい」助言
平和賞「ミサイル内に生きたハトを閉じ込め、飛行経路を誘導できるか検証」
平和賞は、米ハーバード大学のバラス・スキナー博士(故人)の「ミサイル内に生きたハトを閉じ込めて、ミサイルの飛行経路を誘導できるか検証した実験」が受賞しました。 ミサイルの弾頭に「平和の象徴」を閉じ込め、画面に表示された標的をつつかせる。画面のどこがつつかれたかを感知して進行方向を制御し、標的に命中させようという実験でしたが、1950年代に中止されました。 スキナー氏は、レバーを押すとエサが出てくる箱に動物を閉じ込めて行動を制御する「スキナー箱」という実験装置の開発で知られる心理学者です。 授賞の対象になった論文は1960年に発表されたもの。自身の研究が「誘導ミサイルが不要になる未来の世界に向けて大きく貢献するだろうと信じている」と書いています。
植物学賞「生きた植物には、近くの人工植物の形をまねするものがいる」
植物学賞は、ドイツ・ボン大学のフェリペ・ヤマシタ・デ・オリヴェイラ博士らの「生きた植物には、近くにあるプラスチック製の人工植物の形をまねするものがいるという証拠の発見」でした。 南米でみられるツル植物の一種ボキラ・トリフォリオラタは、「視覚」を使って巻き付いた相手の植物を観察し、その葉っぱに似た形に自分の葉っぱを作りかえる、という論文を発表しました。 この植物がほかの植物の葉っぱの形をまねすることはこれまでも知られていて、相手から出ている化学物質を捉えているとか、微生物が運んできた相手の遺伝子を使っているとかの仮説が出ていました。 ただ、この実験で巻き付いた相手はプラスチック製の偽物なので、その可能性が否定されたということのようです。 ヤマシタさんは受賞の連絡があってから、すぐに恩師2人に伝えたそうです。ヤマシタさん自身を含めた3人とも、イグ・ノーベル賞は聞いたことがあっても、よくは知りませんでした。 業界では「植物の知性」を示す研究への批判が多いといい、恩師2人には「研究の認知度が上がるなら」と賞を受けることをすすめられたといいます。 ヤマシタさんの祖父(故人)は熊本県出身で、1956年に神戸を出た船でブラジルへ渡って家族を築いたそうです。 ヤマシタさん自身は2020年に両親らと日本訪問を計画していましたが、コロナ禍で断念しました。 「私は日本の影響をたくさん受けて育ちましたが、日本を訪ねたことは一度もないんです」と答えてくれました。 前編は以上です。残る人口統計学・医学・解剖学・生物学賞は、後編で紹介します。