アパやサントリー、JTB等…意外と多い「非上場」の大手企業、上場しないメリットとは?
創業以来52年黒字経営を続け、フランチャイズ加盟店数は国内最大級など、今や海外にもホテル展開しているアパグループ。2023年度のグループ連結売上高は1,912億円(前期比38.3%増)と、国内屈指のホテルチェーンだが、家族4人で全株を保有しているという。つまり非上場企業だ。 上場企業になると、市場に株式を公開することで多額の資金調達をすることが可能となる。そのため、株式の上場は企業にとって大きなメリットがあるように思える。 一方で、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けたセブン&アイ・ホールディングスは、経営陣による自社株買収(MBO)を検討していることがわかった。MBOを実施し成立すれば、同社の株式は上場廃止になる。 意外なことに、サントリーホールディングスやJTB、日本IBMなど、大手企業にもかかわらず非上場の企業は多い。 では、株式会社が非上場でいるメリット・デメリットとはどんなものだろうか。奈須 大貴税理士に聞いた。 ● 非上場であれば、短期的な利益追求でなく、長期的な視点で経営できる ーー株式会社が非上場でいる際のメリット・デメリットをお教えください。 「非上場のメリットは、まず『経営の自由度』が挙げられます。上場企業の場合、株主からの圧力などにより、短期的な利益追求を求められることがありますが、非上場なら長期的な視点で経営できます。 また、家族経営を続けやすいという点もあります。たとえば、アパグループのように、家族の間で経営権を完全にコントロールできるのは、非上場の大きな利点ですね。 そのほか、市場に株式が公開されていないため、第三者による買収リスクを防ぎやすいといった利点もあります。 反対に、デメリットとしては『資金調達力が限られる』点が挙げられます。上場企業は市場から広く資金を調達できますが、非上場では銀行融資などに頼る必要が生じます。」 ● 外部のプレッシャーを排除するなら、非上場が望ましい ーー大手企業であっても非上場のままのほうがいいケースについてもお教えください。 「大手企業でも、非上場を選ぶ理由はさまざまです。いくつか具体的な例をもとにご紹介しましょう。 たとえば、サントリーホールディングスは、家族経営を維持しながら、ブランド価値の向上や長期的な経営戦略に注力しています。 また、竹中工務店は、外部株主に影響されずに、品質や顧客満足を最優先にした経営を続けています。YKKも独自技術を守り、競争優位性を維持するために非上場を選んでいます。 これらの企業に共通するのは、長期的な視点で事業を運営し、外部のプレッシャーを排除することを重視している点です。このように、非上場だからこそ実現できる戦略があるわけです。」 ーーーーーーーーー かつて株式上場は、社会的信用が得られると、企業の経営者にとって大きなステータスだった。しかし最近では、欧米諸国では上場企業は年々減少している。 また日本国内も、東証において2024年に上場廃止する企業は92社で、2023年の61社を上回る。中長期的な成長を目指して非上場化する企業も増えており、非上場をネガティブと感じる要素は少なくなっているようだ。 これからは、経営者は非上場でいることのメリット・デメリットを理解した上で、会社をどうしたいかを検討することが求められるのだろう。 【取材協力税理士】 奈須 大貴(なす・ひろき) 税理士、公認会計士、認定IPOプロフェッショナル(SIP)。 1994年生まれ、福岡県北九州市出身。有限責任監査法人トーマツ福岡事務所、株式会社Faroを経て、2023年に独立開業。 「会計で会社を強くする!!!」、「あなたの夢、会計力で応援します!!!」というスローガンのもと、スタートアップ企業、中小企業を中心に税務顧問サービスを提供している。 また、公認会計士として、IPO準備企業の支援や上場企業の決算、開示支援も行っている。 事務所名 :奈須大貴公認会計士・税理士事務所 事務所URL:https://hnasu-cpa.com/
弁護士ドットコムニュース編集部