為替相場に「政府と日銀が介入」の誤解…政府の指示を日銀が実行しているだけ
【シニアのためのマネー講座】#90 「おい、のび太! ジュースとパンを買ってこい」「分かったよ、ジャイアン」「……で、お金は?」「ほれ、これで買ってこい!」 あなたの保有株は「金の斧、銀の斧」? 欲張るとヒドい目に遭いかねない いわゆる“パシリ”の光景だが、このジャイアンのいいところは、ちゃんとお金を渡すとこ。 「おまえが出しとけ!」にはなっていないことだ。 「俺のモノは俺のもの。おまえのモノも俺のもの」のロジックでいえば、ちょっと「やさしい」と感じるのだが、これが“為替介入”の実態である。 最近は円相場の下落が激しい。先日、1ドル=154円台に乗せており、約34年ぶりの安値をつけた。市場で警戒されているのが、そう「為替介入」である。行き過ぎた円安に対して、当局がクギを刺そうというのである(この記事が掲載される頃には実際に介入が入っているかもしれない)。 ここで重要なのが、「政府・日銀が介入」という見出しである。しかし、実際にお金を出して、そして指示をしているのは政府(財務省)である。日銀はただただ実行しているだけ。 世間では「一緒になってやっている」と思われがちだが、実際にはそうではない。政府主導で行われている。政府(国)が持っている米国債を売却し、いわゆる「円買い・ドル売り」を行っているのだ。 もし、今後、為替介入が行われたら、急速な円高が予想される。前回(1年半ほど前)行われたときには、円相場が1ドル=150円から130円ぐらいまで20円ほど上昇した。 「金利の高いドルを買っとけばお得じゃない?」と単純に考えていたFX投資家に、お灸を据える格好となった。 それと同じようなことが、今回も起きようとしている。しかし、ジャイアン(日本)の小遣い(持っている米国債)には限界があり、そう何度も使えないのが実情。当然、お金がないことがバレたら、ジャイアンの威信にも関わってしまう。スネ夫(外国)にもバカにされてしまうだろう。 だから、ジャイアンはお金があるように見せながら、のび太をコキ使う“フリ”をするのである。 「のび太! 牛乳とパン、それにポテチも買ってこい!」 「ジャイアン、お金は?」 「お金はないけど……んー、とりあえず行ってこい!」 もし、将来的にこんなことが起こったら、シニアのドル資産は逆に大儲け。出来過ぎのように100点満点の投資となるだろう。 (黒岩泰/株式アナリスト)