「百条委」と「参考人招致」どう違う? 坂東太郎のよく分かる時事用語
日本最大の水産物取り扱いで有名な築地市場から昨秋に移転予定だった豊洲市場の用地売買経緯などを解明するために、石原慎太郎元東京知事(在任1999年4月23日~2012年10月31日)を東京都議会の豊洲市場移転問題特別委員会が参考人として招致すると決め、石原氏も応じる構えを示しました。 【図解】地方議会と首長「二元代表制」とはどんな制度? ただ石原氏をめぐっては百条委員会での説明を求める声もあり、当初は「百条委を避けるための参考人招致だ」との見方もありましたが、報道によると、22日開会の都議会で設置される見通しになったと伝えられています。そこで、百条委と参考人招致の違いについて考えてみました。
ウソを言っても罰則のない参考人招致
地方議会における「参考人招致」とは地方自治法115条の2に定めがあります。「議会は」(今回は東京都議会)当該普通地方公共団体(東京都)の事務に関する(豊洲移転問題)調査又は審査のため必要があると認めるときは、参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができる」です。参考人=疑惑の人という意味ではありません。当時の状況を知っていそうな人や学識経験者など専門家の記憶や知識を聞き、問題解決へとつなげる方策の一つです。したがって求められても出席を拒めるし招致の席でウソを言っても罰せられません。 他方、「百条委員会」は文字通り地方自治法100条に基づいて設置されます。自治体の仕事に重大な疑念が発生した時に置かれる特別委員会で、首長や議員も対象になります。法律に基づく強制力のある調査で、正当な理由がなく出頭や証言を拒否したり、虚偽の証言をしたりした場合には、禁錮刑以下の罰に問われる可能性があります。地方自治法違反容疑となれば議会は刑事告発しなければなりません。議会の過半数の議決で設置できます。
都議会で百条委は過去6回開催
東京都によると、過去に開かれた百条委員会は6回。ほとんどが1970年までで、2005年には35年ぶりに設置され、話題になりました。 《猪瀬氏は設置が決まって辞職》 2012年12月、石原都知事の辞職を受けて行われた都知事選で勝利して就任した猪瀬直樹知事は翌年、医療法人から受け取った5000万円が「不適切だ」と議会から追及されしどろもどろの二転三転。最後は選挙で支援した自民党にまで見放されます。 「知事のクビ」を狙う有力な方法として百条委員会のほか不信任決議があります。議員の3分の2以上出席し、うち4分の3以上が賛成して可決・成立すれば知事は10日以内に議会を解散できます。そうでなければ失職です。 この時も不信任が検討されましたが知事に解散の選択肢を与えるのに及び腰の議員も多く、結局は百条委員会の設置が先行しました。決定が12月18日。万策尽きた知事は翌日に辞職しました。翌年、東京地検特捜部が公職選挙法違反で略式起訴し東京簡易裁判所が罰金50万円の略式命令を出しました。猪瀬氏が納付したため罰金刑が確定したのです。 《舛添氏も総務委で辞任発表》 猪瀬氏辞職にともなう都知事選で勝利した舛添要一氏も私的流用など一連の「政治とカネ」の問題で窮地に立たされます。なかなか辞めない知事に業を煮やした自民党など与党会派は野党とともに2016年6月15日、不信任決議案の本会議上程を決め、可決が確実となりました。前述のように議会解散を舛添氏が選ぶ可能性もあったのですが全政党を敵に回しての都議選に展望が開けるはずもなく辞職願を議長へ提出する運びとなりました。そのため20日に予定されていた総務委員会における集中審議は中止。疑惑を追及できる絶好の場である百条委員会の設置も否決されました。