小芝風花、2024年は“声優”として躍進の1年に 声の演技で拡がる役柄の幅
折り返しにきた『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(日本テレビ系)。桜(小芝風花)の過去が明らかになった第5話は、小芝風花劇場と言いたくなるほど小芝の演技力を堪能できる回となった。 【写真】場面カット(複数あり) 小芝は、2019年ごろから主演級の役を掴み続け、2025年放送のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』への出演も発表されている。特筆したいのは、一言では言い表せないほど、さまざまなイメージの役を演じ続けていること。2023年は、春に『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系)で豪快で快活なラジオパーソナリティーの鼓田ミナレを演じたかと思えば、夏には『転職の魔王様』(カンテレ・フジテレビ系)で、パワハラを受けた経験から弱気になってしまう未谷千晴を、秋には『フェルマーの料理』(TBS系)で強気でクールなヒロイン・赤松蘭菜を演じた。 これだけ異なる役柄を演じられる力を支えているのは、小芝の表情の作り方やセリフ回しだけではない。場面ごとの“声”の使い分けにある。 『転職の魔王様』の未谷のように、自信がない役の場合は響きを優先した柔らかな声を出し、大事な場面ではよく通る強めの声を出すことで「弱気ながらも意思がある女性」を表現。逆に『波よ聞いてくれ』のミナレや『フェルマーの料理』の蘭菜の場合は、低く太めの声にすることでクールで強気な性格を示し、困難にさらされた場面では響きをなくした弱い発声をすることで、キャラクターの揺れる心を表していた。 小芝の声はどんなセリフを発していようとも損なわれないまっすぐで力強い芯がある。キャラクターの内面にある強い部分と弱い部分が見える瞬間に、役の性格や心情に合わせて声の高さ、響きを調節することによって、目だけでなく耳からも視聴者の感情に訴えているのだ。 『GO HOME』の桜は、小芝がこれまで演じてきた役と比べれば、快活すぎるとも弱気すぎるとも言えないニュートラルな役柄だ。桜の声は小芝自身のノーマルな声のように聞こえるが、場面によってきちんと使い分けられている。特に、第5話で遺恨の残る母親・葉月(鈴木杏樹)に対面した時や、向き合おうと決めた食事の場面などは、普段の桜の声とは違う固さのある声で、かたくなな心の内を見せていた。 母親と一緒にいたくないがために、相棒の月本真(大島優子)と科捜研の同期・芹沢菜津(柳美稀)に「帰らないで」と懇願する場面では、柔らかい普段の声から切実な思いが見える声色へとグラデーションのように変化し、桜の中にある家族への複雑な思いが垣間見えた。この桜の思いを受け止める真の表情も含めて、小芝と大島の巧みな芝居を堪能できるなんとも痺れるシーンだった。 当たり前だが実写作品は、俳優がその役の表情もリアクションもセリフの言い方も声も全て担うことになる。小芝は、自身の持てる身体的要素のすべてを使って、役柄の人生を真摯に表現している。 ちなみに、8月公開の『ツイスターズ』では、2回目の海外映画吹き替えを経験し、12月公開のアニメーション映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』では、はじめてアニメ作品の吹き替えを担当することが発表されている。彼女の声を操る力が評価されている証拠だろう。 彼女の声も含めた演技力に惚れ込んだクリエイターたちが、次にどんな役を彼女に与えるのか楽しみだ。
古澤椋子