自分の「夢の目的」はなんだろう?…”サイゼリヤ”と”政治家”の寓話が語る、夢をかなえる起業家の「思考回路」
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第76回 『「視点」こそが人生を変える“道しるべ”…「リピーターを作るために」起業家が持つべき「ミクロ」と「マクロ」の考え方』より続く
起業は目的ではない、世界を変えよう
日本中に1000店舗以上、海外も含めると1500店舗を展開するカジュアルイタリアンレストラン、サイゼリヤ。この日本でも有数の外食チェーンは、千葉県で小さな洋食屋として生まれました。創業時には、普通の洋食レストランであり、開店しても客足は伸びず、しかも火事で店舗が焼けてしまうアクシデントにも見舞われました。 そこで「これから流行る洋食」を探してヨーロッパを旅し、イタリア料理に出会います。 「この豊かな食事を日本の多くの人たちにも愉しんでもらいたい」という大きなロマンを心に抱きました。
サイゼリヤを生んだ秘話
創業者である正垣泰彦氏はこう語っています(株式会社サイゼリヤwebsite内「経営者メッセージ」)。このロマンは「夢」です。当時、まだ1960年代のこと、日本にイタリアンレストランは数えるほどしかありませんでした。こだわりのイタリアンを食べさせる店なら、すぐにでも実現できたでしょう。 しかし、「日本の多くの人たちにも愉しんでもら」うためには、高級料理ではいけない。そこで、当初考えていた価格から7割引きの値段を設定し、それを実現するために90年代からは食材を直接輸入することにしました。多店舗展開を急ぎ、スケールメリットも求めました。その結果、いまのサイゼリヤが存在します。 レストランを開くことが目的なら、最初からその夢は叶っていました。まだ日本人が知らない本格的なイタリアンを食べさせる店を作ることが夢なら、比較的容易に叶ったでしょう。しかし「日本の多くの人たちに」を夢にしたために、「低価格化」「多店舗展開」を実現する必要がありました。 「日本の多くの人たちに」という視座を持っていたことが、いまのサイゼリヤチェーンを生んだといえます。 起業家といいますが、起業は目的ではありません。夢を叶える手段です。その夢も個人のものではなく、世界を変える夢です。古い寓話ですが、政治家に関する話があります。