「高層ホテルが林立するようでは…」 訪日客に人気のスキーリゾートに外資系の大規模開発計画浮上 温泉街の魅力が損なわれる…住民に広がる懸念
長野県の野沢温泉村、外資系企業が80億円投資を計画
長野県野沢温泉村の街中に、海外富裕層向けの大規模なリゾートホテルの開発計画が浮上している。東京の不動産投資会社が出資を募り80億円規模を投資。委託を受けたIHGホテルズ&リゾーツ(本社・英国)が、「ホテルインディゴ」として2027年にも開業する計画だ。二つの客室棟を整備し、部屋数は約100。1棟は9階建てという。 【地図】野沢温泉村の高級ホテル開発予定地
訪日客に人気、宿不足に着目
県内のスキーリゾートのゲレンデは上質な雪を求める訪日客に人気で、新型コロナ禍が明けて周辺の宿泊施設の需要が急回復している。冬季を中心に宿泊施設が足りない状況があり、オーストラリア人を中心に人気が高い野沢温泉村に投資会社が着目した。
高さ36メートル、9階建ての建物に広がる懸念
一般社団法人野沢温泉マウンテンリゾート観光局によると、実現すれば外資系リゾートホテルの進出は村内初。ただ9階建ての客室棟は高さ約36メートルで、野沢温泉の特色である温泉街の風情を壊さないか、地元には懸念も広がる。事業者側は地域の意向も踏まえて計画を再検討し、地元説明会で改めて示す方針だ。
説明会で出た声は…
同村の条例では生活環境などを保全するため公共施設を除き、高さ18メートル以上の建物を建てる際は村側との事前協議を求めている。今回、事業者側は昨年11月に予定地周辺の村民らを対象に説明会を開催。出席者によると、建物を18メートル以下にするよう求める意見や景観、日照への影響などを懸念する声が相次いだ。
「高層ホテルが秩序なく林立するようではいけない」
予定地近くに住む村民は、計画によって歴史と情緒で人々を引きつける温泉街の魅力が損なわれることを懸念し、「高層ホテルが秩序なく林立するような野沢温泉ではいけない」とくぎを刺す。
村長「高さ18メートルは譲れない」
富井俊雄村長は昨年の村議会12月定例会で計画への対応を問われ、「(高さ)18メートルは譲れないラインだと思っている」と答弁。一方、ホテル建設で「今まで来ていなかった客層が村に来るのは良いこと。共存共栄を図れるよう努力をしてほしいと事業者に話したい」とも述べた。
事業者「協調して進めたい」
A.P.アドバイザリーの浅野正和取締役は取材に対し、建物の高さは抑える方向で検討していると説明。「地域の不安は承知している。住民の理解を得ないまま進めるのは不本意なので、協調して進めたい」と話した。