反則投球事件の裏にあるメジャーの不文律
レッドソックスとの第2戦(23日、ボストン)のマウンドに立ったヤンキースの先発のピネダが、二回に不正投球で退場処分を受けた。0-2で迎えた二回二死。打者サイズモアのカウントが2-1となった所で、一塁ベンチからレ軍ファレル監督が飛び出し、審判にクレーム。デービス球審がマウンド上のピネダの右首に光る物体を指で触り、それが松やにであることを認め、その場で退場処分となった。 ピネダへの不正投球疑惑は、今月の10日に遡る。ヤンキースタジアムで行われたレ軍戦で今季初勝利を飾った右腕に対して、ボストンの地元テレビ局が右の掌の異物を映像で捉え、物議を醸した。その試合では、審判団は気がつかず、レ軍側からもクレームはなかったが、この日は“現行犯”での退場。10日間の出場停止処分が濃厚だと言われている。前回登板翌日の11日に大リーグ機構が同選手に警告を発していた中で、性懲りもなく、松やにを使ったことは愚かとしか言いようがないのだが、実は、メジャーでは不正投球を“暗黙の了解”とする文化がある。 メジャーの公式球は、その皮のなめしの技術が、日本のボールのように丁寧ではないため、滑りやすい。日本からメジャーに挑戦する投手が苦労する部分だが、滑るのは、手の大きなメジャーの投手も同じで、その滑りを防止するために、選手によっては、指や手に何かを付けて湿らせたり、滑らないように対処している。その行為は、“暗黙の了解”として許されているのだが、時折、あからさまなケースが問題となる。テレビの中継で投手の手首にテカテカと光る物質を見つけた時などには、ズームで映像が流れ、解説者が「これは、一体何でしょうね」などと指摘する場合もある。 昨年は、ブルージェイズの敵地トロントで、レ軍の中継ぎエースの田沢純一投手が、先発バックホルツと共に疑惑の標的になった。地元放送局の解説者ジャック・モリス氏が、「何か異物が着いている」とコメント。大騒ぎになったが、ブ軍のギボンズ監督は、「疑わしい行為はみていない」とし、それ以上の発展はなかった。よほどのことがない限り、見逃す“立ち入り禁止区域”なのである。