仕事を熟知し、豊富なアイデアを持っているはずの管理職が、なぜ創造力を発揮できないのか?
「経験は当てにならず、決断は難しい」。古代ギリシャの医学者・ヒポクラテスの言葉が示すように、経験は判断を誤らせ、ときに致命的な結果をもたらす。一方で、人は経験から多くを学習し、経験を意思決定に生かしている。この齟齬(そご)と矛盾はなぜ生じるのか。本連載では『経験バイアス ときに経験は意思決定の敵となる』(エムレ・ソイヤー、ロビン・M・ホガース著/今西康子訳/白揚社)から、内容の一部を抜粋・再編集。経験の「罠」にはまることなく、経験を適切な意思決定につなげるためのアプローチを解説する。 第3回は、組織が直面している課題を創造的に解決する「管理職会議」について解説する。 ■ 管理職(マネージャー)会議――ビジネスリーダーの問題解決フォーラム 多くの人々は、成人後の人生の大半を仕事に費やす。自ら事業を営んでいる人は、仕事中の時間や空間を、かなり自分でコントロールできるかもしれない。しかし、そうではない人が、いくばくかの自律的な時間と空間を体験するには、どんな仕組みがあればいいだろうか? 中規模から大規模の企業、または大企業内の一部署を考えよう。つまり、何人かの中級または上級管理職(マネージャー)がそれぞれ異なる職務を担い、その全員がゼネラルマネージャーもしくは部門管理者の監督下にある、という形をとっている組織を想定する。 中級・上級管理職はたいてい、高等教育を受けていて、さまざまな企業、部門、部署での幅広い経験をもっている。その中から、いつの日にか、ある部門または企業全体を率いるようになる人が出てくるかもしれない。 こうした管理職は多忙を極める。そして、厳密に計画された業務の遂行に重要な役割を担っている。アイデアを出し合ったり、それを実際に試したりする時間も空間もあまりないのが普通だ。それどころか、新たなアイデアを取り入れると、得てして仕事量が増して責任も重くなるので、たいていあまり評価されないばかりか、うまくいかない場合には非難の矛先を向けられかねない。